プライマー

アイデアは良いし、面白い、でも...。



  

しっかりと観ていないと時間の流れから取り残されてしまう。
そんなに複雑なお話しではないけれど、時系列はバラバラであっちに行ったりこっちに行ったり...。
“ガレージ・フィルム”と呼びたくなるような作品。サンダンス映画祭で高い評価を受けたらしいけれど、まさにその通りでアイデア優先で、予算はあんまりかかっていない。はっきり言って造りはかなりチープ。映画の難しいところは、潤沢な予算を使ったからと言って、その金額に見合うだけの映画が撮れるかというと、そうでもないところ。豪華なキャストに凄いセットそして素晴らしいストーリーであったとしても、必ずしも名作にはなり得ない。

どこかのIT企業に勤める大学を出た青年たちが4人。会社での仕事を終え、青年の一人の家にある屋根付きのガレージに夜な夜な集まっては、何か研究をしている。これで一旗挙げて起業しようとしている。でも、経費などを考えると、今のままではジリ貧状態。アイデアがあってもなかなか起業は難かしいんだなぁ。
そんなある日、4人組の中でも仲がいい二人が最後まで残って実験を続けていると...。今作っている装置が、どうやら時空間を移動できるらしいと気が付く(デジタル時計を使ってそれを説明してくれるんだけど、イマイチ理解できなかったので、観ている側を納得させせる工夫がここには欲しかった)。この理論をそのままに、人が入れるほどのもう少し大きな装置にすれば、これはすなわちタイムマシンになるのではないか? そう考えた二人は、このビニールのパイプを組み立てただけの、見るからにチープで頼りなさそうな装置を作り、しかもガレージではなく、貸し倉庫の一室から未来へ向かって旅立つ。

アイデアは良いし、面白い、でも...。
それはこの二人が自由に未来へ行けることで巻き起こされる騒動の質が低いからではないのだろうか。別に観ている人がタイムマシンの理屈がわからなくても、それは別にいい。ブラックボックスで当然だしね。でも、偶然それを手に入れてから、この装置を使って何をしたいのか、それをもっとちゃんと描かないと、観ていてもあんまり面白くないねんなぁ。
話しが進むと、新たな疑問が沸き起こる。今、目の前にいる相手が、今のアイツなのか、昨日から来たアイツなのか、それとも...。それがさっぱりわからない。映画の中でも、観ているこちらもわからない。昨日も、今日も、明日も顔が違うわけではないからね。う〜、さっぱりわけがわからなくなってきた! 参ったなぁ。

ついつい比較してしまうのが、先日拝見した「サマー タイムマシン ブルース」。この映画では、曲がりなりにも壊してしまったエアコンのリモコンを取りに行くという妙な目的があり、それなりに理由があった。交錯する時系列の描き方も上手かった。
そう思うとこの「プライマー」は、その辺がちびっと下手なのかな。夢が無く、その代りに妙なリアリティがあるのが惜しい気がすました。
しかし、こうして米国が舞台の映画を観ていると、いろいろ感じてしまう。例のガレージって中国大陸では2家族ぐらいは住んでいそうな広さかな。日本だってこんな広くて屋根があるガレージはそんなにあるもんじゃないと思う。う〜む、やっぱり米国って“富める国”やねんな。そんな妙な部分で感心してしまった。

おしまい。