青空のゆくえ

最後の夏。やり残したこと。



  

さわやかな青春映画だ。
中学や高校時代はこうじゃないとね。高校を卒業してからもう25年近くにもなるボクにとって、いまどきの中高生なんて、まるで異星人を見ているように「理解できないもの」と思っていたけれど、実はそうではなく、案外、彼らもボクとそう変わらないものなんだなと、実感出来ました。もっとも、ここで描かれている世界は、ボクの世代では高校で体験するような出来事だったような気がするけど...。

もちろん、人によって違うだろうけど、中高時代の恋愛って、そりゃ誰かと相思相愛がベストだろうけど、誰か意中の人を思う、そのワクワク感(胸キュン感?)がたまらないのでしょうね。幾つになってもそうだけど。恋愛や異性に対する憧れ。そんな美しく珠のような部分だけを切り抜いたお話しです。
大きなドラマが展開されるわけではない。従って、語られるのは、見方を変えれば、ボクのようなおっさんにとっては毒にも薬にもならない中学生たちの絵日記そのもの。若者にしたら、自分とほぼ等身大姿を重ね合わせ同化する。そして、おっさんにとっては、かつての自分の姿とダブらせて、どれだけノスタルジィに浸れるのか。確かに中身は薄いけれど、観る人によっては評価は分かれる作品だと思う。

中学三年生、夏休みを目前にしたある日。高橋正樹(中山卓也)は親の転勤に伴って米国へ行くことを発表する。本人は淡々としているが、教室のざわめきは消えない。中学最後の夏休み。正樹本人とすれば日本で過ごす最後の夏という決意が漂っている。正樹を取り巻く人間模様が美しく描かれはじめる。
最初は、なかなか顔が見分けられず、誰が誰だかさっぱりわからない。最後の方になってようやく個性が見えてきた。女子はバスケ部のキャプテン、クラスの委員長、帰国子女、クラスで浮いている女の子、赤ん坊の時からの幼馴染。男子はバスケ部のキャプテン、引きこもりになる幼馴染、そして不良の同級生...。
ボクが気に入っているのは、早朝の体育館の描写。静まり返ったコート、ボールが跳ね、若い肉体が躍動する気配だけが漂う。顔を見合わせ、にやっと微笑む。言葉は交わさないのに、視線だけで交わす会話。
ちょっとお話しが盛りだくさん過ぎるような気もするけど、この年代って同時に幾つもの課題が同時並行で進行していくものなんですよね。ボクは男女間のことだけに絞り込まなかったこと、大人(親や先生)がほとんど出てこなかったことなどは、正解だったと思う。

もちろん、ベストではないけれど「後味スッキリ!」いい夢見させてもらいました。
芸能界音痴なので、出演している若手俳優さんはみなさん知らない人ばかり。でも、何年かすれば「豪華な顔合わせやったね」と言われるような作品になっているのかもしれませんね。

おしまい。