運命じゃない人

運命の映画?!



  

「この映画はなかなか面白い」という極秘情報が回ってきて、そろそろ仕事も忙しくなってきたけれど、万難を排してガーデンシネマのモーニングショウで拝見してきました。休日とは言え、そこそこの動員。極秘情報だった割にはウワサになっていたようで、そんなに話題になっていなかったのに、口コミ情報は恐ろしいものです。

一見、退屈で何気ないお話しが展開されるのだが、実は...。お話しというか、アイデアの勝利なのでしょう。

結婚式を目前に控えて彼氏に裏切られた女(霧島れいか)が家を、ボストンバック一つを手にして家を飛び出す。お金も無く、思案に暮れとあるレストランでコーヒーを飲みながらこれからのことを考えていた。すると、向かい側の席に座っている男性二人組みから、こっちのテーブルに来て一緒に食事しませんかと誘われる。
一方、冴えないサラリーマンの宮田(中村靖日)。どうやら独身にしては豪華なマンションを購入し住んでいるらしい。同じ職場の先輩に明日だけデートに使うからその部屋を貸せと迫られていた。

ここまでの展開で、この二人がどこかで出会ってその後がどうなるのかと思っていたら...。

その日の仕事を終え、宮田は自宅に戻った。戻って靴下を脱いだところでケイタイが鳴る。出ると友人からの電話だ。今から一緒に飯を喰おうという誘いだ。帰ったばかりで渋る宮田だったが、あゆみちゃんについて大事な話しがあるという一言に敏感に反応し、いそいそと出かける(はだしのまま革靴をはいて...)。
この二人が待ち合わせしたレストランこそ、先ほどの女性が途方に暮れていたレストランで、宮田の友人の神田(山中聡)こそこの女性を誘った本人だった。

やっぱりな、そう来るんだよな! それでこの冴えない宮田とこの女性がくっつくのか?

伏線に伏線が張られ、表面上は何でもない出会いがあっただけの、普段と何も変わらない週末の一夜なんだけど...。
良く練られていて、グイグイと引っ張ってくれる。そうか〜、そうだったのか、の連続。そう来るか、そんな手があったのか!
意外な展開に膝を打ち、そして笑い転げる。
ストーリーの語り部が入替るごとに、いつもと同じ夜だったはずのこの一夜の姿がどんどん変えてえいく。いつもと同じだと思っているのは宮田だけで、その裏にはとんでもない事実が隠されていたのだ!

久し振りに唸った。
文句なしに面白い。

じんわりと染み入るような、余韻を楽しむのではない。余韻とか含蓄などとは一切関係なく、ストレートにただひたすらカラっと面白い。泣かすにせよ、笑わすにせよ、日本の映画館でここまで観客の反応を引き出せる作品はそう多くない。そういう意味では大成功の作品であることは間違いない。

今年観た邦画では「美女缶」がピカイチだと思っていたけど、それに比肩する作品。
監督は内田けんじ。もちろん知らない人。この映画の値打ちはストーリーの面白さそのものにずいぶんウェイトが掛かっている。だから、この監督に関しては、次作に大いに期待したい。次回作でこの人の本当の才能を判断出来るのではないでしょうか?
レストランで神田が宮田に説教を垂れている、その傍らでコーヒーのお替りを持ってきたレストランの従業員が聞き耳を立てている。走り去るタクシーをダッシュで追いかけ、女からケイタイ番号を聞きだす宮田。運転手も良かったし、その後、道路で小躍りする宮田(この姿はなかなかケッサク!)。
計算され、練りに練られたストーリーが展開される...。天才なのか、それとも...。
少なくとも、楽しみであることだけは間違いない。

何も考えずに、まずご覧下さい。 忙しい時間を縫ってご覧になる価値はあります。二重丸のオススメ。
残念ながら、とうの昔にガーデンでの上映は終了しています。丹念にチェックしていると、どこかで上映されるチャンスはあるでしょうし、DVDやビデオになる可能性は高い(もう発売・レンタルされてる?)ので、ご家庭でご覧になっても充分楽しめると思います。
下品な場面も少なく、なんだか漫才を見ているような気になってしまう面白さです!

おしまい。