about love アバウト・ラヴ/関於愛(クワァンユーアイ)

TE QUIERO



  

東京・台北・上海合作のオムニバス・フィルム。いや、競作かな。
「about love」というタイトル通り、各都市で繰り広げられる三組の愛が描かれている。それが、いずれも一筋縄ではいかない“変化球”だから面白い。

ボクが最もいいと思ったのが、三番目の都市、上海で語られる物語り。
古い上海の下町。もうこんな一角はあんまり残っていないだろうし、普通の人がこんな町家に部屋を借りて下宿できることもないだろうけれど、それはまぁいい。
ここで修平と大家の娘ユンは淡い思いを交わす。思いを交わすのではなく、お互いの思いは別のところにありながら、それが交錯する。そのへんの描き方が丁寧で上手い。
現実に「愛は盲目」なのだ。一人の人に心を奪われている修平にはユンの姿は目に入っていても、ユンの思いはまるで見えない。ユンの淡く切ない思いは、修平に決して届くことがない...。
やがて、ユンは修平の秘密を知ることになる。そんな修平は下宿を引き払い、一時帰国することになる、その背中にユンが投げかけた言葉は「TE QUIERO(テ・キエロ)」。
そして、修平が上海の戻ってきたとき、意外なところで「TE QUIERO(テ・キエロ)」の本当の意味を知る。彼は目が覚めたように、あの下宿を訪ねるが、そこは再開発のために取り壊されていた。
舞台もいいし、役者も良かった。そして、何より上海で語られる物語りがいい。イメージされがちな上海の風景を安易に登場させないのも良かった。
ユンを演じたリー・シャオルー。見たことがあるような気がしていたら、なんと「シュウシュウの季節」のシュウシュウだったとは、びっくりした。

上海編に比べると、台北編や東京編はあっさりしている。
台北編は、言葉を交わしたことがあるだけの女性に振り回される(?)日本人男性の滑稽な姿と、そこで交わされる筆談(漢字の国に生まれて良かった)。そして通わせる互いの思いの描写が繊細でいい。
東京編は、ちょっと話題先行かな。「藍色夏恋」のチェン・ボーリンと伊東美咲の組合せ。台北からアニメの勉強をするために留学しているヤオ。大都市の東京でなかなか溶け込むことが出来ない異邦人の淋しさを繊細に演じている。お互いに淋しさを抱える二人が一瞬すれ違う。そして、たったの一言も言葉を交わさないままに、火花が渋谷の交差点で一瞬スパークする。台詞が少ないこの芝居を二人は上手に演じていましたね。

三作をまとめて観て、何か深い印象が残る作品ではないけれど、試みとしては評価できるのではないでしょうか。

この日は公開初日。舞台挨拶があるという情報を入手したので、朝早くから恵比寿にある東京都写真美術館に行き、ずいぶん並んで整理券を入手したのですが、なんと上映時間直前でもその回のチケットを売っていた模様で、なんだかどっと疲れてしまいました。
東京都写真美術館へお邪魔するのは始めてなんですが、常設の商業ベースの映画館とは作りもシートも違って、それがいいのか悪いのかはわかりませんでしたが、観やすいし座り心地も良かったです。
しかし、伊東美咲さんは細くてスタイルが良く、顔が小さかったのが印象に残りました。はい。

おしまい。