せかいのおわり

あたまのテッペンに落書き!



  

何とも意味深なタイトル。「せかいのおわり」と言うよりも「映画の終わり」って感じさえ漂ってくる。決してわけがわからないのではなく、何となくこの映画が伝えたいことも理解できるんだけど、決して共感は出来なかった。

目を見張ったのが、主人公たちがいる盆栽屋「苔moss」の店舗兼住宅。う〜ん、こんな家に住んでみたいような...。
なんか、長塚京三を若くしたおっさんが出ていると思ったら、息子さんなんですね長塚圭史って、知らんかった。最近の演劇界での売れっ子だと、文字での情報には触れていたけれど、実際の姿を見るのは始めて。顔が似ているだけではなく、話し方や雰囲気もお父さんそっくりなんだから、ちょっと笑ってしまう。

同棲していた彼氏に振られたはる子(中村麻美)が、同郷の幼馴染・慎之介(渋川清彦)が店長(長塚圭史)と二人で住むお店に転がり込んでくる。この数シーンだけで、はる子と慎之介の関係がだいたいわかってしまうから、その見せ方は上手いよね。そして、店長を含めた三人の奇妙な共同生活がスタートする。
男にとってはなんだか痛いお話し。女にだらしなくて、年がら年中ナンパしまくっているはる子、ナンパするのと憧れたり恋をすることは全く別だと考えてるんだ。だから、本当ははる子が好きで好きでたまらないのに、その思いを慎之介ははる子に素直に伝えられない。他の女の子とは気軽にお喋り出来るのに、はる子に対すると普通の会話は出来ても、こと自分の気持ちについては口下手になってしまう。それはとっても不思議なことだけど、その気持ちはボクにも良くわかるな。

しかしはる子も、かわいい顔をしながら、たいがいなお姉さん。気は強いし、喧嘩はしょっちゅうしてしまう。おまけに男運が無茶苦茶悪いと来てるから始末に終えないね。

今、思い返すと、この映画ちゃらんぽらんに撮られていたように思ったけれど、よく考えて過不足の無いエピソードがつなげられていたんだな。
このはる子の不器用な恋の行方を描いているのではなく、恋とか愛とか、そんな派手目なものだけが人生ではないんだよ。管理が行き届いた水槽がいつも綺麗なように、人生も何気ないことの積み重ねが大切、その何気なさの連続が綺麗な水を作り出している。そんな日々の暮らし方を、全く違った手法で教えてくれているような気がしました。
時には、食べかけのアイスを放り込まれて、平穏な毎日がブチ壊されてしまうこともあるけどね。

自分を捨てて元の鞘に収まった男に復讐する(お〜怖!)ために、夜中に駆け出したはる子。それを追っていく慎之介。なんかアンバランスな二人。だけど、街灯の下で一人っきりになったはる子は「せかいのおわり」かと思うほど寂しくて、切なくなる。
そうか、やっぱり人は一人では生きていけないものなんですね。
「ぎゅっとして!」とははる子なりの愛情表現なんでしょう。

醒めたおじさんには、大方不発でしたが、はる子・慎之介・店長というへんてこな三人に大いに共感できる方も少なくはないでしょうか。
大阪では11月に入ってからシネ・リーブル梅田で上映される予定があるようですね。

この日は人数がとても少なかったにもかかわらず、やっぱりこの劇場(渋谷シネ・アミューズ)のシートアレンジは、映画を観るのには向いていないように感じました。

おしまい。