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ボクは竹中直人の一途さに嫉妬する



  

何を隠そう、ボクは原田知世ちゃんの大ファン。その証拠に、今を去る20数年前、ボクのユースホステルの会員証の写真を貼る場所には、彼女が微笑んでいた(う〜懐かしい!)。物持ちがあまり良くないボクだけど、このユースの会員証はまだちゃんととってある。
最近はちっとも見かけないと思っていたら、TVでオンエアされているCMによく出ているそうだ。ボクはほとんどTVを見ないから、そんなことは全く知らなかった。

原田知世と竹中直人が主演で、監督が竹中直人。彼の映画はそんなに嫌いじゃない。
それに予告編はとってもいい出来だったのだ。

こんなおっさんになっても、胸が高鳴り、そして胸がキュンとしてしまうことがある。
子どもの頃夢見ていたことは何も実現できていない。それどころか、もう夢見ることさえ忘れている。でも、子どもの頃に持っていた純真な思いはまだ胸の奥底にひっそり仕舞い込んでいる。そんな純真な青年の思いをそ〜っと思い出させてくれるお話しなのです。

海辺にある総合病院の医師、佐々木(竹中直人)。
彼が担当する患者には佐々木の高校時代の同級生がいた。彼女は佐々木にとって特別な存在だった。思いつめて恋した初恋の彼女だったのだ。もちろん実らぬ片想いだったのだけど。
佐々木は誓う。「ボクの力で彼女の病気を治す」と。

残念なことに彼女はガンで手術が必要。だから未知子(原田知世)は入院することになる。佐々木は未知子に告げる「佐々木です、高校時代に同級生だった佐々木です」と。
だが未知子は佐々木のことが思い出せない。最初は知っていて、思い出せない振りをしているのかと思ったけれど、未知子は本当に思い出せないみたいだ。
最初は「何かと頼りになる」と思っていた未知子だったが、しつこい佐々木の言動を次第に鬱陶しく思うようになる。
果たして未知子は佐々木のことを思い出すのか。未知子の病気は治るのか。そして、佐々木の淡い思いの行方は...。

ボクは竹中直人の一途さに嫉妬する。

この際、医者の倫理観はどうでもいい(映画なんだから)。それでも佐々木は院長(なぜか、三浦友一なんだよなぁ)から叱られてしまう。
別に未知子との再開を予期していたり、未知子への思いに義理立てて、この年まで独身だったわけではないだろう(いや、そうなのか?)。だけど、自分の全てを賭けて未知子への治療に当たる。その姿勢には素直に感動する。そして、何の照れもなくその事実を未知子に告げる。
ボクにはそんな根性も何もない。妥協し、隠し、照れてしまう。ボクなら担当医にすらならないだろう。きっと。

竹中直人が演じる佐々木は、ボクにはないものを持っている。全て。
そして、自分がとても出来ないことを全てしてくれる。全て代弁してくれる。

夢にひたっているうちに、この物語りは幕を閉じる。
悲しくともなんともない。佐々木は思い残すことなんか何もないんだから。

難しいお話しではない。観る人によっては全く違う感想を持つと思うし、それはそれでいい。
ボクには決してすることが出来ないであろうことをしてくれた竹中直人に、ひたすらの感謝だ。
それにしても、原田知世はかわいく年をとってるなぁ...。

ボクが十三のナナゲイで映画を観るのは、ひょっとしたらこの作品が最後になってしまうかもしれない。出来ることなら、またボクに十三の街を歩かせてよ。再開されることを期待しています。

おしまい。