サマー タイムマシン ブルース

この夏一番の快作?



  

“サマータイムのマシンブルース”なのか、それとも“サマーのタイムマシンのブルース”なのか。それさえも知らなかった。ただ最初は、贔屓の上野樹理ちゃんの新作という認識だけだった。そして、ボクの耳に聞こえてくるうわさはいいものばかり。こりゃ期待できそう!
何かの拍子に、この原作が第三劇場の舞台だと知り、調べてみるとなんと日本橋の小劇場で公演がある。う〜、どうしよう、なんて悩んでいるうちにチケットは売切れてしまった。しまったなぁ。こんなに面白いお話しなのなら、見逃す手はなかったなぁ...。

とにかく面白い。
ボクが知っているのは上野樹理ちゃんだけで、他は誰も知らない。でも、そんなことは全く関係なく、やっぱりお話しが面白いと映画も面白い。これはこの夏の最大の収穫であることは間違いない!

大学の学生会館の一階にあるSF研究会の部室には、写真部が居候していて暗室がある。
この大学、いったいどこなんだろう? ずいぶんと牧歌的で、でも整然として、そして情緒ある街に位置している。なんだか学園モノを地で行く立地条件。こんな学校で4年間過ごすのは幸せだろうなぁ。
写真部は一応写真を撮っているようだけど、SF研究会はSFを研究すると言うよりも、ただ集まってだべっている同好会(これは死語で今では“サークル”か)のようなもの。この日は少ない部員で、学生会館前の芝生広場で野球を楽しんでいた。
時折入る妙なカットのせいで、ここは何かの伏線なのかもしれないと感じる。でも、一体何の伏線なんだろう?

テンポが良くて、もう一つ大事なのは、難しいことを難しいと感じさせず、かなり強引にお話しを展開させていく点。理解できていなくても、観ているこちらは勢いに乗って付いて行くことが出来る。
正直に言うと主人公の瑛太以外は、大学生と言うにはちょっと無理があるかもしれない風貌。でも、舞台出身の役者らしいノリの強さで、そんなことは微塵も感じさせない。

そうこうしているうちに事件が起きる。部室にあるエアコンのリモコンが壊れてしまい、動かなくなる。顧問の教授に修理を依頼したら、この先生がリモコンを完全に破壊してしまった。
そんな事件が、こんなに壮大な物語に発展していくなんて、ちょっと思いもつかないぞ!

そうこうしているうちに、このSF研究会の部室の横に謎の乗り物のような“物体”が置いてあるのをみつけてから、お話しは一気に“ややこしく”なる。ここから展開される強引さがこの作品の最も面白い部分。
何が気に入ったかと言って、目の前にあるタイムマシンを使って、リモコンを取り戻しに行くという発想。普通、もっとよ〜く考えて、そして行動するのではないだろうか? こんな短絡的な発想のためにタイムトラベルするかと思うと、カッパさまとして後世に語り継がれる存在になるのだから、バカと言うか、何と言うか。でも、学生らしくていいよね。学生ならではの直情的な視野の狭さがいい!
ボクなら競馬の結果や株で儲けるとか、テストに何が出るのかなんて、そんなことが知りたいけどなぁ...(一週間後の週間競馬ブックが一冊手に入っただけど億万長者や!)。

出ている役者さんが、きっちり性格分け出来ているのがいい。ボクは20数年後の後輩(本多力)とカッパさまになる学生(永野宗典)が良かった。この中から一人でも今後も活躍してくれる人が出てくれたらなぁ...。大いに今後に期待しましょう!
上野樹理ちゃんは、がっかりさせられた「亀は意外と速く泳ぐ」の汚名を見事に返上。それどころか、改めて彼女の魅力を確認できました。

名画座の扱いも良かったなぁ。気に入った。
こんな街でしばらく暮らしてみたいものです。

そこそこロングで上映していましたが、さすがに関西地区での上映は終了したようです。ボクは初日の初回で拝見したので、座席はほぼ埋まっていましたよ(良かった!)。それに銭湯で誰かに盗まれてしまうシャンプーセットを頂戴しました。
恐らくもう少ししたらビデオもDVDも出るでしょうから、そちらでもお楽しみいただけるでしょう。
確かに深さはないけれど、笑って笑ってスッキリできる秀作。もちろん二重丸のオススメですよ!

おしまい。