帰郷

携帯の留守電に吹き込む、哀しさは...



  

ナナゲイで何度も予告編を見た「帰郷」。
気が付いたらナナゲイでの上映は終わっていた。

ボクの中で評価がぐちゃぐちゃになっている西島秀俊。「ハッシュ!」で強烈なインパクトを与えてくれれた片岡礼子が久々に復帰。そして「ニワトリはハダシだ」で主人公の妹を演じていたかわいい女の子・守山玲愛も主役級の活躍(この子は今後にも期待したいです!)。
楽しみにしていたのにうかうかしている間に、観逃し決定かと悔やんでいたところ、なんと神戸でひっそりと上映されているやんか!
ぴあを片手に小躍りしそうになりました。しかも「リンダ リンダ リンダ」「Dear フランキー」とほとんど時間のロスなく3本ハシゴが可能。いいこともあるもんやなぁ。

東京で暮らす主人公の晴男(西島秀俊)のもとに、田舎に住む母親(吉行和子)からハガキが届く。ハガキで知らせることも、その存在も、すっとぼけて味がある。自分の再婚を、息子にハガキで知らせる親はあんまりいないだろうな。
息子は、披露宴(結婚式?)に出席するためにあわてて故郷へ向かう...。

このお話し、どうなんだろう。20代前半までの方がご覧になっても、面白かったんだろうか? そんな素朴な疑問が頭をよぎる。
この際、それはいい。ボクには面白かったし、作り手の意図が手に取る伝わって来た(ような気がする)。

お話しとしては、すごく単純なことで、わずか二日間ほどの出来事を描いているのに過ぎない。でも晴男にとって、この二日間は何年にも匹敵する重さがあり、いろんなことを考えたんだろう。
このように、自発的に考えるのではなく、成り行きなんだけれど、半場強制的に追い詰められて考えさせられる。考えざるをえない。何十年か生きてきたら、そんなこともある。あるなぁ。
だから、必死なんだけど、その必死な姿を傍観していると、同情するのではなく、おかしかったり、面白かったりするから不思議。そう、不思議な感覚。
「もし、自分だったら...」なんて、微塵も思わずに、完全に見学者の立場にいる、そんな自分が不思議。

設定がね、生きている。
高校を卒業して以来、一度も会わなかった女の子と故郷の飲み屋で出くわす。セリフではなく、表情だけで「この二人には何かあったな」と思わせる(もちろん、何もなければ映画にもならないんやけど...)。
母の再婚話が絶妙のマクラになっていて、ボクはたぐられるようにしてこの映画の世界に引き込まれてしまう。

結局、考えた(考えさせられた?)のは、「自分には何が出来るのだろう?」ということ。
それを必死になって考えるわけ。

そういつもいつも必死になって考えているわけではないのだから、人生の節目節目は、好むと好まざるとにかかわらず、考えましょう!
但し、自分が出した結論、それが受け入れられるのか、拒否されるのかはわからない。一生懸命考えても、それがベストとは限らない。結局、人生はそんなもなのね。

この映画は、独り静かに見てもらいたい。
映画館じゃなくてもいいです。そして、しみじみと受け止めてもらいたい。派手さはないけれど、いつまでも心にのこる佳作だと思います。

おしまい。