ベルンの奇跡

贔屓のチームが勝つのは、いつの時代でも気持ちがいいものだ



  

まだサッカーがのどかで、庶民の娯楽だったころの物語り。

今ではちょっと考えられないようなエピソードがちりばめられている。考えてみれば、サッカーやクラブはもっと地元密着で、地域に根ざしたものであってもいいかもしれない。欧州や南米から有能なプレーヤーを連れてくるのも、勝利やレベルアップには必要不可欠なものだとはわかるけれど、それじゃ、残りの日本人プレーヤーは地元出身かそれともユースやジュニアからのクラブの生え抜きで固めてもらいたい。すると、地元での盛り上がりは今とは比較にならないほどになるはず。そんなことを考えていた。
サンフレは比較的ユース出身の地元の選手が多いけれど、もっともっと密着することが必要だ。

背景は第二次世界大戦後の1954年。ドイツの炭鉱街エッセン。ここでパブを営む一家がある。父親は招集されロシア戦線へ連れて行かれたが、生きているのか帰ってくるのかもわからない。まだ小学生の末の息子マチアスは地元のクラブのエース、ヘルムント・ラーンのボーイ(ホームゲームの時、一緒に入場したり、ちょっとした世話を焼く役)をしている。一家は、父親抜きで生きていくために、権利を買いパブを経営している。上の息子と娘はパブで手伝いをしている。
ラーンがスイスで行われるワールドカップの西ドイツ代表に選ばれた頃、突然、父親が抑留されていたロシアから帰ってきた。
この突然の帰還に戸惑うのは、母親だけではなく一家が戸惑っている。正直云ってもう父親は帰ってこないと思っていた。だから彼抜きでもなんとか切り盛りしてきたし、何もかも上手く行っていた。そこへ、ずかずかと父親が現れ、自分を主張し始める。
しかし、父親も元のさやに自分の居所を見つけられずに戸惑っていたのだ。良かれと思っていしたことが裏目に裏目に出てしまい、どうしていいのかわからない。さらに、後遺症で坑道ででも自分の居場所が見つけられない。

そんな家庭の事情と、同時に開催中のワールドカップでの西ドイツチームの苦悩が語られる。そして、監督の老練な人心操縦術が実を結び、どうにか決勝へ駒を進める。対戦相手はこの大会の初戦で大敗を喫したハンガリー。この当時ハンガリーは無敗を誇り、優勝間違いなしとの評価だった。

神父さんからクルマを借り、父親と末の息子はベルンへ出かける。行ったところで、チケットもないのにどうやって観戦するんだと思うけど、そこはまだおおらかな時代背景。
感動ではないけれど、自分が応援するチームが勝つ、贔屓の選手がゴールを決める。それほどスカッとして気持ちのいいことはない。ましてやそれがワールドカップの決勝の舞台であればなおさら...。

ただ惜しむらくは、ちょっと掘り下げが浅いことか。
親子の葛藤をテーマにしたものでは「父帰る」が印象に残っているけれど、それに較べると本作は中途半端な印象が残る。あの映画に較べると、この作品の父親はずっと人間臭いのだけど、逆に言うと魅力に大きく欠ける。
また、新聞記者のエピソードも同時平行で走っており、それはそれで悪くはないんだけど、焦点が絞りきれていない散漫な印象を受けてしまうかな。

冒頭のシーン。伝書鳩が小屋に帰ってくる。子供たちが駆けつけ、その鳩が運んできた手紙を読む。
何とも言えない。サッカーの試合の結果を知るために伝書鳩ですか。凄すぎる!
まぁ、中継がないゲームの途中経過が知りたくて、ネットサーフィン(もう死語?)を延々と繰り返している誰かさんと余り変わらないけどね。
何度か出てきて興味を引かれるのが、サッカーシューズのエピソード。そうか最近ではあんまり見かけなくなったけれど、ポイント交換式シューズの原型はこんな風だったんだなぁ。

この映画は韓国映画ではないけれど、チケットを買って入場する際に、何故かオタフクソース特製の「チジミの素」をお土産にいただきました! ありたとうございま〜す!

おしまい。