火星人メルカーノ

コイツはひょっとしたら...



  

なんともすっとぼけた、それでいて味があるアルゼンチンから来たアニメ。
この作品がビデオやDVDになるのかどうかは知らないけれど、このメルカーノに会わないと後悔すること必至。同じような感覚は「不思議惑星ギンザザ」を観たときにも感じたけれど、あの時とはちょっと違う。ギンザザのようなスッキリ感はあんまりない。これはボクの気分的なものだけではないと思う。
なんだかお話しがあまりにもリアルで、なんだか突き抜けた部分がない。遠くから傍観しているのではなく、ひょっとしたらボクの身近にもメルカーノが居るのではないか、そんな気がするからかもしれない。まぁ、きっと居ないとは思うけど...。

火星人のメルカーノが興味本位で地球へやってくる。それは、火星に到着した地球からのメッセージを載せた衛星にメルカーノのペット(?)がつぶされて死んでしまったから。
しかし、高度に進んだ自家用ロケットに乗り込んだメルカーノはトラブルに見舞われ、ほうほうの体で地球、しかもアルゼンチンへ不時着。全てを失った彼はブエノスアイレス(?)の地下で淋しく暮らしていた(この辺のチープ感が何とも言えずにイイんだなぁ)。

火星人の高度な能力をしても、先立つものがない(お金がない)。メルカーノは家電量販店に押し入る泥棒に便乗して、ノートパソコンを強奪する(ここのリアリティさも何とも云えない!)。インターネットに接続して、火星にいる友人やガールフレンドにコンタクトを試みる...。
このインターネットに接続するまでも、妙にリアリティがある。プロバイダー選びなんて、すっ飛ばしても、このストーリーには影響なさそうな気がするんだけど、このみみっちい描写がこの作品の味があるところなんでしょうね。

メルカーノがwebの世界に構築したヴァーチャル空間。そこにある日闖入者が現れる。
それはフリン(不倫?!)という少年。このアルゼンチンのオタク少年とメルカーノの交流が始まる。それはヴァーチャルの世界を超え、現実の世界でも友情として育まれるのかと思ったが...。

しかし、このフリンの登場までは楽しかった。でも、ここからメルカーノが商業主義に染められるあたりからどうもボクのテンションはちょっと下がってしまうんだなぁ。
さまざまな紆余曲折を経て、フリンとの友情はどうなるのか? そしてメルカーノは火星へ還ることが出来るのか?

面白いのは間違いない。ひょっとしたら彼の国(アルゼンチン)では続編も作られているかもしれない。
でも、ボクにはちょっと“夢が無い”と感じた。
本当は、アナーキスト(?)たちの手助けで火星に還るというお話しの膨らませ方が正解だったような気がするなぁ。暴力的過ぎるところがちょっとね、夢が無いような...。

でも、これは一見の価値がある作品であるのは確かです。
普通のアニメの処理と、ヴァーチャル空間での3Dアニメの切り替えなどは見事としか言いようがありませんね。
何かの特集上映や映画祭で再映される可能性はあります。
最終日のヌーヴォはレイトにも関わらず、20名ほどの入りで、これはちょっとヌーヴォらしくないような...。
カルト的な魅力のあるメルカーノ、チャンスがあれば是非ご覧くださいね。

おしまい。