醉画仙

天才画家の生涯は...



  

チェミンシク主演の時代劇。この作品で、イムグォンテク監督が2002年のカンヌで監督賞を獲った。作品の内容よりも、このカンヌでの評価が有名になった映画ですね。
ボクの場合、今まで韓国映画は現代劇を観ることが多くて、時代劇は「春香伝」や「YMCA野球団」それに「スキャンダル」ぐらいしか観ていない(「武士」も時代劇でした)。もちろん、韓国でも日本のように時代劇は人気があるので、どんどん作られているのになぁ。中でも「スキャンダル」は宮廷劇だったし、衣装などが強く印象に残っているせいか、この「酔画仙」を観ていても、帽子を被った人が出てくると、誰でも彼でもヨン様に見えてしまってしかたなかった(駄目だねぇ)。

お話しそのものは、史実に基づいているのかどうかは、そっちの素養が全く無いので不明だけれど、1800年代の中頃に李朝朝鮮で活躍した宮廷画家(?)チャンスンオプ(雅号オウォン・吾園)の半生紀が描かれている。
このスンオプ、描く絵は一級品だが、純粋な芸術家。出世や金銭には興味が無い。従って、頭を下げたり、おべっかを使うことがない。それどころか、おあいそやお世辞を云うことすらしない。だから、ある意味煙たがられてもいる。それに、権力を持ったり、階級を上ることも無い。自由奔放で、好き勝手な生活をしている。
そんなスンオプが唯一アタマが上がらないのが、高級官僚のキムビョンムン(アンソンギ)。スンオプの才能をいち早く見抜き、その後も陰になり日向になり、をスンオプ援助してくれた。

幾つかのエピソードを繋ぎ合わせて、スンオプの半生を描く訳だけど、一貫しているのは、そのエピソードが芸術家としてのスンオプの純粋さ、そして出世や権力、金銭に対する鈍感さを描いていることだろう。
主義主張があったわけではない。美しい絵を見て、美しい絵を描きたい。ただそれだけ。
ラストの壮絶さは「さもありなん...」と思わせるエピソード。

官僚の美しい娘への叶わぬ恋も経験し、妓生との腐れ縁もあった。しかし、世俗に関することには至って無頓着。
やっぱり、天才とはこういうものなのだろう。

画像は美しいし、チェミンシクの演技も素晴らしいとは思う。だけど、正直に言うと「観ていて面白くとも何とも無い」。そんな作品だ。エンターテイメントとしてこの作品を楽しむことは難しいかもしれない。そうではなく、天才芸術家の半生を描いたこの映画を“芸術作品”として“鑑賞する”。それが正解なのかもしれない。

しかし、チェミンシクはスーツにネクタイという役ではなく、こんな路地裏や自然の中をさすらう役が似合います。
出来れば、でっかいスクリーンでご覧いただきたい作品です。丹念に探せば、この後もどこかで上映される可能性は低くないと思いますよ。

おしまい。