葱トントン、卵パカッ/Son, My Enemy

キャンプ用具を取り出して、辛ラーメンを食べるしかない!



  

九条から天六へ移動するには(シネヌーヴォからユウラクザへハシゴして映画を観るには)、中央線で堺筋本町まで行ってから堺筋線へ乗換え、それとも谷四まで行って谷町線でもいい。速いのは堺筋線かな。そんなことがだいたい頭でもわかる。が、アックジョンにいて、そこからチュンムロまで移動するにはどうしたらいいのだろう。地下鉄の路線図とにらめっこして考えないといけないし、どれくらい時間がかかりそうなのかも未だによくわからない(情けないぞ!)。
スカラ座と言われても、どこにあるのかピンと来なかった。でも、地図に導かれて行ってみると「あぁここね」って感じ。古くからあるタイプの映画館で、シングルスクリーン。何故か香港の街角にある映画館を思い出した。座席は二階建てになっていて、巨大なスクリーン。一杯になれば700人ははいれるのではないでしょうか。
幾ら地味な作品で、平日の昼下がりとは言え、わずか3人で観る映画ではないと思うけど、どんなもんでしょうね。

釜山の傍所。真夏なのに、クーラーもない倉庫の一角。カセットテープにラベルを刻印する機械が動いている。どうやらここは海賊テープの製造工場。ここで汗まみれになって働いているのがデギュ(イムチャンジョン)。
今日も一日仕事が終わる、と思ったら、女が訪ねてくる。どうやら別れ話のようですね。意外ともてるんだと思ったら、なるほどデギュはこまめに努力をしているんだ。今夜も飲み屋で意気投合した女性を自分の部屋に連れて来て、さぁ今からお楽しみ...。
そんな時に、ピンポ〜ンとドアのベルが鳴る。こんな時間に一体誰が?
ドアの向こう側にいたのは、小学校の低学年くらいの少年イングォン(イインソン)。「お父さん!」と言いながら、ずうずうしくも部屋に入り込んできた。会ったことも見たこともないこんなガキにお父さんなんて呼ばれる筋合いは無いはずなんだけど...。ムードはぶち壊しで、女はぷりぷり怒って出て行ってしまう。
怒ったデギュは子どもを部屋から追い出してしまうが、ガキはドアの外でわめきだす。ようやく静かになって、その翌朝。子どもはドアの外で眠っていた。警察に突き出すことや、駅で置き去りにすることも考えたけれど、なんとなくそれも上手くない。
話しを聞いてみると、どやら釜山から歩いて群山の方まで行きたいみたいだ(それがどうしてなのかが、残念ながら上手く理解出来なかった、残念)。ようし、それに付き合ってやろう!
歩くと言ってもこんな小さな子どもに歩けるはずがないし、その間に嫌な顔や、嫌な部分を見せ付ければ、子どもの方から自分に愛想を尽かすだろう...。
でも、そんな考えはデギュが自から泥沼に入り込む第一歩だったのかもしれない...。

なんとも、ありそうでなさそうな軽いノリで始まるこの作品なんだけど、実はなかなか面白くて、なおかつジーンとするハートウォーミングなお話しなのですね。
途中、所持金が底をついてしまい、旅館に頼み込んでも冷たく断られ、仕方なく駅の待合室で新聞紙にくるまってふてくされていたら、若者グループがやって来る。シーンが切り替わったら、ギターを片手にデギュの独壇場になっている。あぁ、この人(イムチャンジョン)って俳優じゃなくて歌手だったのね...。いきなり展開されるこのシーンは、とっても気に入りました。
最後は、いかにもいかにもなんだけど、そこに至るまでのお話しの持っていき方、そしてイムチャンジョンと子役のイインソンが良くて、「な〜んだ」ではなく、「じ〜ん」とさせれます。上手いなぁ。

結局、デギュはイングォンに付き合って歩き続けることになる。
お金の問題もある、それに明かされなかった秘密もある。それ以外にも、かつては酔ってからんだKBS(TV局=韓国版のNHK)のプロデューサー(ディレクター?)の手助けもあり、一躍有名人、時の人になってしまった。
そして実は...。

笑わせておいてホロっとさせられる。
お話しは味深いものの、地味な出演者だけに、日本での上映はどうでしょう。ちょっと苦しいかな。
でも、もしチャンスに恵まれたなら、観逃す手はないと思います。

おしまい。