マパ島/Mapado

猟奇的なアジュマ



  

千戸(ちょの)から西大門(ソデムン)へ急いで移動する。事前の調査によれば、西大門のドリームシネマで「公共の鏑2」を上映しているはず。が、どうも様子がおかしい。何人かが不満げな顔をしてドアから出てくる。ここはシネコンではなく、一つのスクリーンしかない劇場。入り口の上には確かにソルギョングの姿がペンキで描かれた大きな看板が掲げられているのになぁ。
ボクも入り口のドアを開けて入ると、係りの人らしきおっさんに呼び止められて、押し返されてしまった。「?」
どうやら、予定を変更して「アナコンダ2」という映画の試写会をするようで、この試写会は関係者だけが入れると云っているようだ(きっと)。この日は木曜で、明日から番組が入れ替わってしまう。う〜ん、残念。
仕方がない。ラッキーでわけがわからないまま試写会を拝見できたこともある、まぁ、こんなこともある。
で、この晩はこれ以上映画を観るのは諦めて、西大門からそう遠くない新村へ。予定を早めてもらい一杯やることにしよう。地下鉄で新村へ向かう。
昨年の6月以来。イミヨンの「幸せは成績順じゃないでしょ」や「童僧」を買った中古ビデオ屋さんは影も形もなく、洒落たお花屋さんになっていた。残念だな。重ね着をしていると、昼間は汗ばむほどの陽気だったのに、夕方を過ぎると冷え込んでくる。そんなちょっぴり冷たい空気の中、歩道の端からバラを入れてあった桶の水を入れ替えている花屋のお姉さんの姿を呆然と見ていたら、中島美幸の「店の名はライフ」を口ずさんでいた。
こうして、時は流れていくものだ。

さて、翌日いつものcoexのメガバックスで拝見してきたのが、スーパースターが出演しているわけでもないのに、ちょっとしたヒットととなり、ボックスオフィスで第一位を記録してしまった佳作「マパ島」。
この回も、早朝にもかかわらず100名ほどの入りで、正直言ってびっくりした!

この作品は日本で劇場公開される可能性は限りなく低いので、しっかりストーリーを紹介しましょう。

いきなり、オダルスが登場して、狭いキッチンでチゲを料理している。その手つきは鮮やかだし、料理そのものもなかなか凝ったものらしい。彼はレンタルビデオと漫画喫茶を足して割ったようなサロンを経営しているのかな。まっとうな商売と云うよりも、半分黒社会に入っているような感じだ。そこの親分さんが一生懸命料理しているギャップが面白いわけです。
店の女の子が待ちわびる中、チゲがテーブルに運ばれる。さぁ、食べよう。でも、その前に神様に感謝のお祈りを捧げなければ...。
オダルスは、今日がロトくじの発売日だったことを思い出す。折からの雨、自分で買いに行くのが面倒になり、店の女の子を近くのコンビニへくじを買いに行かせる。どう、買う数字は毎回同じ。そして、韓国のロトは抽選の直前まで発売しているのだ。
女の子は言いつけられた通りにくじを買い、店に戻ろうとする。そして、雨宿りした店先で、中継されている抽選を眺めていると...。

一方店では、喜びを爆発させ、皆肩を抱き合って歓声に包まれていた。
が、その160億ウォン(約16億円)当たったくじを買いに行った女の子が戻ってこない。最初は喜んでいたが、次第に顔面蒼白になり、外に飛び出し彼女の姿を必死になって探すのだが、もうそこには誰もいない。
「持ち逃げしたんだ!」「俺達の金を持って!」

ここで登場するのがイムンシク演じる悪徳刑事チュンス。オダルスに分け前をはずむとそそのかされ、自分の仕事をそっちのけで捜査に乗り出す。このチュンスだけでは心もとない。オダルスは腹心の部下ジェチョル(イジョンジン)に彼と一緒に行動するように命令を下す。
当たり前の場所では彼女を見つけられなかった二人は、互いに衝突しあいながらも、次なる目的地へ。その目的地とは、彼女の母親が住む「マポ島」だった。女はこの島に帰ってくるはずだ。
調べてみると、この島へは定期船はない。二人は漁師を雇って島へ向かう。しかし、二人は揃って船には弱かった。激しい船酔いに襲われてグロッキー寸前(このちょっとおかしい船頭さんも時々見かける人ですね)。
そして、勇躍二人が上陸した島は...。

予備知識があってもいいし、まるでなくても大丈夫!
とにかく、次から次へと仕掛けがあって、お腹が痛くなるほど笑えます。ちょっとご都合主義の部分もありますが、まぁ許容範囲でしょう。
これで一体どうやってオチを着けるのか、実はこの部分をボクは一番ドキドキしながら観ていたんだけど、思わずニヤッとしてしまう味なエンディングで、八方丸く収まるとは言わないけれど、上手な締めくくり。こりゃいいです。(でも、ちびっと安易かな?)

イムンシクの相棒を務めるイジョンジンは、吉川晃司 を若くしたような感じで(実は、サンフレッチェのGK下田にも似ている)、ボクは今まで見たことがないような気がしたけれど、調べてみると「海賊ディスコ王になる」で主演をしていた男の子でした、現在は入隊中のようですねどこかで。この人とイムンシクのデコボコ・コンビがそれだけで面白いのはもちろん。
でも、なんと言っても、ポスターになったり、映画館に等身大の恐ろしい看板も置かれていたおばさん5人組が抜群です。このビジュアルだけ見ていると、コメディではなくホラーかスプラッターものかと思い込んでしまいそうです(そんなことないか?)。

何かの映画祭では字幕つきで上映されるかもしれません。そんなチャンスに恵まれたら、迷わずご覧下さいね。
むふふっと笑って、後には何も引かない。スカッと面白い作品。いわゆる韓流スターが出ているわけではありませんが、まずまずのオススメ。ビデオやDVDでも充分にお楽しみいただけると思います(でも、買ってまではどうかな?)。

おしまい。