ビューティフル・デイズ

インドネシアの青春譜



  

インドネシアの映画を観るのは初めてかもしれない。
もちろんジャカルタにも映画館はあるだろうし、ビデオやDVDで映画を楽しんでいるに違いない。暑い街だから、エアコンが効いた映画館で映画を楽しむのは、とても人気がある娯楽の一つなのかもしれませんね。
当然、ハリウッドから輸入される映画ばかりではなく、国産の作品もたくさん撮られているはず。そして、この国からここ数年で一番のヒット作という看板をひっさげて登場したのが、この「ビューティフル・デイズ」。

最終回にギリギリで間に合う。チケットを買うときに「まだ予告編ですよね?」「はい、充分間に合いますよ」。
「混んでますか?」この質問に言葉の返事はなく、静かに首を左右に振るだけ。
劇場に入ると、あれまぁ、片手ほどしか入ってないよ。ガーデンでここまで少ないのは久し振りだ。

大ヒット作だというのを理解できないわけではない。でも、全てが「ぬるい」。
高校に通う女の子のグループ。このグループは新聞部のメンバー。リーダーはかわいくて、行動力があって、そして勉強も出来る。校内の作詞コンクールでは今年も優勝を狙っている。
なのに、朝礼の場で校長が発表したのは予想もしていなかった男の子の名前。今までその存在を歯牙にもかけていなかったチンタは、自分より上手い詩を書くランガに興味を持つ。そして、取材と称して接近を図ると、すげなく追い返されてしまう。
「どうして?」今までちやほやされて、そんな経験したことがないチンタは驚きながらも、怒りを覚える。だけど、本当はちょっぴりランガに惹かれる...。

この恋の行方を縦軸にして、ランガの家庭環境や、仲良しグループの一人の自殺未遂事件など学園ものにありがちなエピソードを横軸に織り交ぜながら物語りは進んでいく。
しかし、どれもどこかで目に耳にしたことがあるようなエピソードばかりのような気がする。ピザ屋や古本屋でのデートに、ライブハウスでのパフォーマンス、そしてアメリカへの留学...。新鮮さや意外さには欠けてしまうかな。
それとも、この映画の世界に入り込めずに、斜に構えて見てしまうボクが若さを失っているのでしょうか?
でも、何だかわかる。これが米国の若者が演じているのではなく、インドネシアのアッパーミドル層に属する高校生が、ジャカルタ(?)で演じるところに意味があるのでしょう。
映画の中で、それこそ夢にも見られないような物語りが展開されるのではなく、ひょっとしたら手が届くかもしれない世界が語られることに、この作品が大ヒットした原因があったのではないでしょうか。
しかし、自家用車を運転して通学して、遊びに行くのにタクシーで乗り付ける高校生が実際にいるとは思えないけど、どんなもんなんでしょう?

チンタと自殺事件を起こす女の子アリヤはかわいいです。ランガもなかなかかっこいいね。
余談ですが、ある日、チンタが通学に使ったピンク色のリュック、それが「EAST PACK」なのには驚きました、ソウルで見かけなくなったと思ったら、インドネシアで売られていたのか!
あまりヒットしなかったから、日本でのブレイクはないと思うけれど、チャンスがあればご覧になってもいいかもしれません。
でも、正直言って、次回作に期待ですね。

おしまい。