ゲート・トゥ・ヘヴン

ここは天国への入口か



  

この冬は名古屋へ何度かお邪魔した。しかし、そのいずれもが仕事絡みで、駆け足で走り抜けるだけで、ほとんどウロウロ出来なかった。それも仕方ないけどね。
で、今回は別件もありプライベート、なのに相変わらずの駆け足でお邪魔しました。本当は前夜から名古屋入りして、何本か観てもいいかなと思っていたのだけれど、諸般の事情でそうも行かなかった。
初めての映画館はちょっと緊張する。場所も雰囲気もわからないから。
早い新幹線で名古屋へ着き、金山でウインズに寄り道。千種で降りて東へ少し歩くと「シネマテーク名古屋」へ着く。雑居ビルの2階(3階だったかな?)。場所はこんなものかとも思うけど、ロケーションにはちょっと驚く。ここでレイトを観終わったら、まっすぐ家に帰りつける自信がないよ!

昨年の秋口に何度か予告編を見たような気がするのだけど、観逃していた。少し前に京都のみなみ会館でも上映があったけれど、ちょっと行けなかった。すると、今回のボクの名古屋行きに合わせるように、モーニングのみだけど上映が始まる。ありがたいことです。

ここ「シネマテーク名古屋」は、在阪のどこの劇場にも似ていない。強いて言えば「planet+1」かな。それとも、東京で言えば渋谷のユーロスペースの奥のほうのスクリーンをうんと小さくしたような感じかな、福岡のシネテリエもこんな感じだったかもしれない。とにかく、こじんまりとしていて、新しくなく、スクリーンも小さくて、天井も低い。
だからと言って、駄目な映画館だと言っているのではありません。手作り感が一杯ある、ぬくもりを感じられる劇場です。ただし、当日券を買っても、チケットの半券をくれなかったのは何故かな?

日本では全くこんなこと考えられない。それだけ日本は単一民族国家なのだ。逆に言うと、外国の方にとって日本は生活しにくく、働きにくい国なんだろうな。
不法入国の疑いで、フランクフルトの空港に隣接する入国管理センターに収容されているロシア人の青年アレクセイ(ヴァレラ・ニコラエフ)が主人公。彼は元軍人で、飛行機の整備士をしていたが、上官を殴りつけて逃亡中。国に送り返されれば、逮捕される。そして、飛行機のパイロットになることを夢見ている。
ここにいてもロシアに送還されるのを座して待つだけ。人権団体の援助もあるが、政治的理由による亡命を希望しているわけでもない。
同室のアフリカ系黒人の変なおっさんトーゴ(ソティギ・クヤテ)とこの施設から脱出を計画している。手引きをしてくれるのは、清掃担当のおばさんたち。そしてその元締めは空港内施設で働く労働者を束ねるおっさんダック(ミキ・マノイロヴィッチ)。
アレクセイは配管ダクトを通じて、命からがら施設の外へ脱出成功。しかし、同室の変なおっさんトーゴはそのまま部屋に残ることになった。

施設を抜け出したものの、そこで待っていたのはタコ部屋生活。そりゃそうだ、アレクセイはドイツで暮らしていくための市民権もなければ、正当に滞在を証明する査証も旅券も持っていないのだから(とも思うんだけど、このあたりは適当に上手くぼやかしてある)。
そして、アレクセイはインド人の美しい女性ニーシャ(マースミー・マーヒジャー)と出会い、まぁやっぱり、当然この二人は恋に落ちる。
面白いのはニーシャがスチュワーデス志望で、夜な夜な駐機してある飛行機に忍び込んでは各航空会社の乗務員の制服を盗んでいること。こんなのありか。ボクも清掃係りになってもいいな。さらに、彼女に目をつけたルフトハンザのお偉いさん(ウド・キアー)がまたまたユニーク。でも、こんなおっさんも確かにいそうだ。

よくわからないけれど、閉鎖された環境の中で恋が芽生えはぐくまれ、男たちのなかにも友情が育っていく。一種の連帯感が生まれ、それが思わぬ形で花開いていく。ラストはどうも結論を急ぎすぎたような感も否めない、これで空港がこの二人にとって「天国へのゲート」だったとはとても思えない。でもまぁそれも許容範囲内でしょうか。

決して必見ではないけれど、こんな夢を見るのも悪くないと思わせます。特にインド人の彼女マースミー・マーヒジャーはなかなかチャーミングでかわいいです。彼女が登場すると、インド映画のような演出が施されるのも面白い!
しかし、やっぱりと言うかなんと申しましょうか、トーゴからむしりとるように木彫りの羊を買う日本人って...。

本編上映前に二本の短編がオマケで上映されます。全自動式の求婚装置(?)はなかなか。でも、ちょっと意味不明の窓拭きのおにいちゃんのお話しの方が面白く、印象に残っています。両作ともセリフがないだけに、演出者の力量がストレートに出る作品です。
こうなると「ツバル」も観てみたい気がします。

それにしても、最近ちっともインド映画が公開されなくて、淋しいですね。

おしまい。