岸辺のふたり

もっと静かに楽しみたかった



  

セリフが一つもなく、なおかつたった8分ほどの短編のアニメが映画館で上映される。これは凄いことだと思う。だけど、正直なことを言わせて貰えば、ボクはこのアニメと無名な頃に出会いたかった。
それだけ、この作品に関する、無意味な美辞麗句が重ねられ、それらが先行して露出している。そんなコピーはいらなかった。
何だか素直な気持ちではなく、感動を押し付けられているような気がした。
そうじゃないでしょ、感動とは自発的に自分の心の中から生まれてくるものでしょ。誰かに押し付けられたり、煽られて、感動は得られるものではない(と思う)。

「なんだか知らないけれど、凄いアニメがあるらしい」

ただそれだけの予備知識でこの作品と出会いたかった。

影がね。美しいの。とても。
まるで、ぱらぱら漫画がめくられていくような、どこかぎこちない動き。そんなぎこちなさを補って余りがあるような、力強いキャラクターが影を引き連れて画面上を躍動する。

そうそう。人生って案外こんなものかもしれない。
そして、その相棒には、自分で漕ぐしかない自転車が似合っている。

ゴミ箱を掃除する話しと、魚と追いかけっこするお坊さんのお話しが併映。お坊さんのお話しの方は、なんだか中国アニメを観ているような気がしました(こちらも、影が上手い!)。

おしまい。