ブエノスアイレスの夜

素材は悪くないのだが...



  

暗いお話し。
ストーリーの暗さに伝染してしまったように、画面の基調も輝いているというよりも、どこかくすんだような暗さが漂う。まるでモノクロの画面を観ているような気分になる。
ちょっと異常で猟奇的な雰囲気を漂わせながら、ストーリーは語られていく。
ちょっと惜しいのは、このストーリーの語り部を一層のこと、カルメンの妹アナ(ドロレス・フォンシ、この子はかわいいょ)とカルメンの幼馴染である心臓外科医アレハンドロ(ルイス・シェンブロウスキー)にしてしまった方が良かったのではないだろうか。
当事者からちょっと離れた距離にいた二人が語る方が、客観性が出て良かったと思うし、この二人なかなか面白いキャラクターなのに、その面白さが映画の中ではほとんど生きていなかったのが惜しい。

父の病状が悪化したため、マドリードに住むカルメン(セシリア・ロス)が20年ぶりにブエノスアイレスに帰ってくる。妹のアナはそれが待ち遠しくて仕方ない。
帰ってきたカルメンは、どこかよそよそしい。彼女にとってブエノスアイレスは故郷であり、家族が住む街でありながら、忌み嫌う街でもあることが徐々にわかってくる。
そして、カルメンが負ったトラウマと、ちょっと倒錯した性的嗜好も明らかになっていく。

予期せぬ出会いがある。
グスタボ(ガエル・ガルシア・ベルナル)との出会い。最初は興味があり程度で、割り切っていた、それが水が下に流れ落ちるように、徐々にそして最後には一気に傾注していくのだから、男女の仲とは不思議なもの。

これが普通の恋愛物なら、観ているこちらもうっとりと酔いしれることができるのかもしれない。そうそう、年の差なんか関係ないよ、なんて思いながら。
でも、この映画を観ながら酔うことは出来ない。かと言って嫌悪感を抱くわけでもない。これはどういう感覚なんだろう。
そして衝撃のラストまで...。

素材(演じる役者さん)は一流で、とっても魅力的。
料理方法(ストーリー)や料理人(演出)をちょっと誤ったかな。万人受けはしんどいと思う。惜しいな。
ベルナル君のファンの方には見逃せない作品かもしれません。

おしまい。