幸せは成績順じゃないでしょう/
School Record Isn't Proportional to Happiness

時は流れても...


  

2004年の6月にソウルへお邪魔したときに入手した中古のビデオを、年の瀬も押し詰まってからようやくビデオデッキに挿入しました。
この映画はイミヨンがデビューした作品で、製作は1989年ですから15年も前の映画なんですね。あちこちに今でもみかける顔が登場して、ある意味なかなか興味深いです。翌年に続編も製作されたと聞いていたので、爽やかな高校生の青春ものかと思っていたのですが...。
監督は「公共の敵」「シルミド」のカンウソクなんですねぇ(びっくりしました)。

確かに15年若いイミヨンは若い。それに噂どおりなかなかかわいい。今も太くはないけれど、すっかり表情に貫禄が付いてるもんなぁ。
その他、目を惹くのがキムミンジョン(KNで放映されていた「真珠の首飾り」や「島の先生」に出てました)。若いし、なんかチンピラのような感じ(でも、実は苦学生でイイ奴なんです)。

ストーリーの底辺に流れるものは暗い。
主人公たちは高校2年生(3年生?)の同じクラス。そして、今でも15年前でも高校生にとって最も関心があるのは、成績と異性。
どうして、出来が良い生徒と落ちこぼれの生徒が机を並べて同じクラスで授業を受けているのか不思議だけど、男女が同じクラスにいるのも不思議。今まで観てきた韓国の高校は男女共学でも、クラスは別々だったような気がするけどね。
同じクラスにいる何人かの生徒たちのエピソードを集めて絡めた群像劇。何かの行事に向かって心を一つにまとめて...、というものではなく、割と淡々と個人のエピソードが流れていく。
いや、ここまで書かなかったけどこの映画は受験へのアンチテーゼに他ならない。日本とは比較にならないほどの受験戦争に巻き込まれている韓国の高校生たちの悲壮な青春が描かれている。しかし、韓国の高校生たちも勉強ばかりしているのではない。異性への憧れや、綺麗な先生への恋慕、そして友情...。青春だなぁ。
丁寧に描かれているとは言えない部分もある、しかも、あまりの急展開に観ているこちらとしては“口をあんぐりと開けて”見守るしかない部分もあります。

結局、15年前に(きっとそれ以上前からだろうけど)大学受験についての問題提議が出されておきながら、時が流れてもそれはちっとも改善されていない。それどころかますますエスカレートしている。
この映画の冒頭で修能試験(日本のセンター試験にあたる)の日が映し出される。親も先生もそして先輩も後輩も、一心に我が息子、娘、教え子、後輩、先輩の好成績を祈る。
ソウル大学を頂点とするピラミッドを形成する大学群。そのどこの大学に入るのか、それによって彼(彼女)の一生が大きく左右される。

結局、社会で成功し、韓国という国の流れを作るのはこの受験戦争を勝ち抜いてきた人たちばかり。それだけに、一朝一夕にはこの受験システムは変わらないのでしょうね。まぁ日本も同じでしょうけど。日本とちょっと違うのは韓国では過去に科挙という官吏登用試験が行われていたことと、両班という貴族制度があったことでしょうか...。それだけに、誰でも能力さえあれば、公務員になったり、良い企業に就職できるチャンスが多い、良い大学へ進学できる今の制度が堅持されているのでしょうか? その辺はボクにはよくわかりませんけどね。

多くの人がこの作品をご覧になるチャンスがあるわけではなさそうなので、もう少しストーリーを紹介すると...。
クラスでも出来(成績)が悪いボング(キムボソン)とチョンジェの二人組み。ボングはクラスで一番成績がいい優等生の女生徒ウンジュ(イミヨン)に憧れを抱き、チョンジェはお色気全開の保健の先生に熱を上げている。父親がおらず、母親とともに貧しい生活を支えているチャンス(キムミンジョン)は金持ちの息子にいつも「ゴミ臭い」とからかわれている。
純真なボングの思いにほだされて、ウンジュは一度だけデートをする。親から好成績を期待され、勉強にそして成績の順位をいつも気にしている彼女にとって、とても素晴らしく楽しい経験だった。もちろんボングにとっては天にも昇るような時間だった。
そして、学内での定期試験。結果が校内の掲示板に貼り出される。ウンジュは全開の試験で6位だったが...。
前回のデートでウンジュが気に入ったけれど、お金がなくて買ってあげられなかったウォークマンをボングは成績が上がったからと親から貰ったお小遣いで買い、プレゼント用にリボンをかけてもらう。
しかし、そのウォークマンを受け取る人は、もうどこにもいなかった...(涙)。

恐らく、日本で上映されることはないと思いますが、カンウソク監督やイミヨンやキムミンジョンのファンの方ならご覧になってもいいかもしれません。それ以外の方にとってはどうなんでしょう? ちょっと後味が良いとは言いにくい映画です。
さらっとタイトルで検索しただけでも、この作品の中古ビデオを扱っているショップもあるようですから、比較的簡単に入手できるのかもしれません。

おしまい。