「恋愛小説/Lover's Concerto」

動かないけれど、写真は物を言う


  

またまた「番外編」。韓国映画をDVDで拝見したものをもう一本ご紹介しましょう。
今回は「猟奇的な彼女」のチャテヒョン、「クラシック/ラブストーリー」のソンエジンが出演している2002年に公開された「恋愛小説/Lover's Concerto」。
昨年(2003年)、福岡のアジアフォーカスで日本語字幕付きで上映されていますね。昨年のアジアフォーカスは、「オアシス」も上映予定に入っていたし、足を運ぼうかどうか直前まで散々悩んだんだけど、事情があり泣く泣く取りやめた。そんなチャンスを逃していただけに、この作品は是非とも観たいと思っていた(でも、こんな形でこの映画を見るとは思っていなかったけどね)。

まぁしかし、この映画、何とも形容がし難い「難しい」映画なのだ。
ただ難しいだけではなく、画面に引き込まれて、そしてうっとりと酔いながらおぼれていき、そして驚愕に包まれる。
こんな映画をどう言おうか、やっぱりメロドラマなんだろうか?

ボクはこの映画を、もっとすっきりした恋愛ものだと思っていた。それだけに、ちょっと肩透かし。それに、お話しをこねくり回しすぎているような気もした(物語が複雑になればなるほど、こちらの語学力の問題で理解が難しくなるしね)。
題材もストーリーも役者も悪くない、だけどちょっと「切れ」が悪いと感じた。これは、演出なのか、脚本なのか、それとも編集が悪いのか...。この作品にシャープな「切れ」が加わっていたら、きっと長く語り続けられる作品になっていたと思う。惜しいな。
もう一つ言えば、この映画を見ながら、ボクは誰に感情移入して見ればいいのか(誰の視線に立って見ればいいのか)、最後まで良くわからなかった。それも、この映画を「難しい」という印象を持ってしまった原因の一つだと思う。

今は、タクシーの運転手をしながら写真の勉強をしているジファン(チャテヒョン)のもとに、差出人が書かれていない手紙が届けられる。その中に入っていた写真を手がかりに、ジファンは送り主を探し始める...。
まるで「クラシック」のように、過去と現在が行ったり来たりしてストーリーが展開する。
ただ、大きな違いは、現在と過去の差異がわずか5年と小さいこと。そして5年だけに「親が経験した...」のではなく、自分自身が経験したことを5年後の自分自身が振り返るこにとになる。自分自身で振り返る過去は、まだこなれていないだけに「美しい」のではなく、苦く切ない。

5年前。
ある喫茶店でアルバイトをしていたジファンの前に現れる二人組みの美少女(ソンエジンとイウンジュ)。ジファンはスイン(ソンエジン)に一目惚れしてしまい、猛烈にアタック。ここまでは普通のお話しだけれど、このスインとギョンヒ(イウンジュ)二人組みはいつも二人で行動している。だからジファンとのデートもいつも三人で出かけることになる。ジファンも別段それを鬱陶しいとは受け取らず、三人で遊ぶことに慣れていく。

ジファンはこの手紙を送ってきたのは、5年前に付き合い始め、ちょっとした行き違いから別れ別れになったままの二人のどちらかに違いないと勘づく。

幾つもの伏線が張られ、こんがらがった糸を解きほぐすように丁寧に語られる。
仲良く姉妹のように育った二人が、ジファンに出会うことによって、同じ相手を愛し始めてしまう。そのことから生まれる心の葛藤。ある意味、煮え切らないジファンの態度。いやいや、煮え切らないのではなく、20歳とまだ若かったジファンには、人を愛することがどういうことなのかまだわかっていなかったのか...。

この映画でビックリしたのはイウンジュの存在。今までまったくのノーマークだったけれど、彼女はチャテヒョン、ソンエジンという看板に負けるどころか、伍して素晴らしい演技を披露してくれる。
ラスト近くで、彼女がジファンと屋台で飲むシーンで腕に包帯を巻いている。その理由がわかった瞬間、不覚にも涙が出そうになった。

この物語りが、その後どうなっていくのか。知りたいような、もうどうでもいいような。本当に二人は幸せになれるんだろうか?
結局、ジファンはどちらを愛していたのだろう?
本当は、もう少しっすっきりとしたハッピーエンドを迎えるか、それを暗示する何かが欲しかったかな。

恐らくそう遠くない将来日本でも公開されるのではないでしょうか?
自信を持ってのオススメではないけれど、是非日本語の字幕つきでもう一度観てみたい作品です。

DVDのジャケットにも使われている、高原で雨に合った三人がジャケットを傘代わりにして、雨を避けているシーンは、詩的でなかなか良かった。映画だから当然だけど、絵になるシーンでした。
それと、最近、写真といえばデジカメでばかり使っているけれど、35ミリもまだまだ捨てたもんじゃないなぁ。今度の休みはずっしりと重い一眼レフを片手に出かけてみようかな、そんな気にさせられる作品でしたね。

まだ続くこの「番外編」。次回でひとまずおしまいとなります。
まだ見ていませんが、今回ソウルで買ってきてもらった最後の作品「初恋死守決起大会/Crezy First Love」を近日中に紹介する予定です。しかし、自分で頼んだんだけど、何とも偏った選び方やなぁ。

おしまい。