レディ・ジョーカー

撮影所創業50周年記念作


  

この映画を観る予定は全く無かった。
でも、先日お邪魔したシネ・リーブル梅田が4周年記念ということで、チケットを買うとオマケでレディ・ジョーカーの前売り券をプレゼントしてくれた。どうやら“名門・日活が今回、撮影所創業50周年を期して、石原プロの特別協力を得て、製作に挑んだ”作品だそうです。これも何かの縁かと思いブルク7へ出かけました。
メジャー公開される邦画はほとんど観ない。これと言って理由があるわけではないけれど、どうも足が進まなくて、観る邦画はひっそりと公開されている地味な作品が多いねんなぁ。

高村薫の原作は確かに読んでいる。が、ボクの場合乱読気味なので、その中味はあんまり覚えていない(忘れてしまっている)。普通、原作を読んでいたら、忘れていても映画を観ながらどんどん思い出すもんだけど、今回はさっぱり思い出せないから始末が悪い。本当に忘れてしまっているのか、それとも原作をかなりデフォルメした脚本になっているのか...。

誰の視点に立ってこの映画を観ていけばいいのかがわからなかった。
確かに複数の視点に立ってこの映画が進んでいくのはわかる。だけど、誰に感情移入すれば良いのかがわからないから、凄く焦点がぼやけてしまっている。
どうしてこの事件が起こったのか? まずそれが良くわからない。そこまで日の出ビールを恨むのか、もう少し丁寧に描いてくれないと。複雑な背景があったはずだけど、動機付けの描写がほとんどないのが惜しい。そして、チームを組むメンツもどこまで結束しているのか、わからない。金にこだわるのか、愉快犯なのか、それとももっと別の理由があったのか...。
後半になれば、視点は刑事に移る。警察内部での確執があるのはわかるし、内部に怪しい陰がある苛立ちもわかるけれど、いきなり視点が犯人側から若手の刑事に移るのはどうでしょう? 唐突という印象がぬぐえない。

この原作を映画化するにはもう少し焦点を絞った方がいいでしょうね。きっとこれでもかなり肉を落としているとは思うのですが...。
個人的な思いとしては社長の姪を演じる菅野美穂がもうひとつだったような気がします。もう少しかわいい方の方が良かったかな。

あれもこれも全て良しとはなかなかいかないものです。
原作が著名なら著名なほど難かしいでしょうね。そう言えば「たそがれ清兵衛」や「壬生義士伝」は上手く映画化されていたなぁ、そんなこの映画とは関係ないことを思い出しておりました。 もうしばらく上映していると思います。

おしまい。