コーラス

美しい歌声にはうっとり


  

街にはそろそろクリスマスソングが流れ出した。そう言えばクリスマスまでもう一ヵ月。以前は繁華街やショッピングセンターをうろつくことが多かったから、こういう季節ものの音楽には自然に触れていたけれど、最近はそんな場所にもとんとご無沙汰しているなぁ。
やっているのは知っていたし、昨年は誘われたのにも行くチャンスが無かった「大阪ヨーロッパ映画際」。今年で11回目だそうです。関西では映画祭は少ない(いや、ほとんど無い)ので今後も是非頑張って続けていただきたいですね。この日の動員数を見ている限り大丈夫だとは思うけど...。
それにしても驚くのは、運営というか観客の捌きかたの拙さ。開場時間を厳守するなら、上映時間も厳守してください。観客にゆったり観てもらおうという意図で指定席制にしているのだろうけれど、そのために30分以上も並ばなければならないのなら意味は無い。ほとんどの方は「コーラス」を観に来ているのだから、ある程度人が並び始めたら指定券への交換を始めればいい。前売を持っている人は事情を知らずにいきなり指定券への交換の列に並んでしまう方もいた。これは並んでいる者にとっては著しく公平性を欠いていて、係員も見て見ぬ振りをしていたようだった。これでは並ばされている人からクレームが出なかったほうが不思議なほどだ。
ボク自身、並び始めてから座席に座るまでの40分ほどが、正直、不愉快だった。
まぁ、そんなことはともかく、初めてお邪魔した海遊館ホールは予想外に良いホールで映画を観るのには充分なホールだった。これならわざわざ指定席にする必要も無かったような...。

さて、拝見したのはフランスの映画「コーラス」。フランスでは大ヒットしたヒューマンドラマ。
監督さんが来日されていて、舞台挨拶とティーチインもあったのには驚きました。その後お邪魔した動物園前のシネフェスタにポスターが貼ってあったので、この後劇場公開も控えているようですね(それやったら、今回無理してこの映画祭で観ることなかったかなぁ)。
世間から隔絶された寄宿学校が舞台。時は1940年代の後半だから、第二次世界大戦のつめ跡が子供たちの心にも残っている。この学校に新しい舎監(=先生?)が赴任してくるところからこの物語は始まる。もう初老と言っても差し支えがないような、小太りで禿げ上がった先生(ジェラール・ジュニョー、この顔はどこかでも見たことあるぞ!  「バティニョールおじさん」だ!この時もいい味出してたなぁ!)。
「池の底」と名付けられているこの学校。良家のおぼっちゃま方が預けられ勉学に励んでいるのではなく、何か事情があり一癖も二癖もあるような子供たちが集まってきている。はっきり言って掃き溜めのようで、荒れている。そして、この学校の絶対権力者として君臨している校長の方針は「生徒を力で押さえつける」と言うものだった。
新任の先生クレマン・マチューは性善説、校長は性悪説。他の先生たちは、学校も生徒に対しても何とかしたいとは思っているものの、もうあきらめてしまっている。マチューがもらうアドバイスは「無理だよ」という一言ばかり。マチューも今まで体験したことがなかったような悪ガキどもを前にして確かに手を焼いていた。だけど、彼は辛抱強く、粘り強く...。自分が一度は諦めてしまっていた合唱を子供たちに教えはじめる...。

この映画は、あくまでもマチューの日記というスタイルでお話しが進められていく。だから、合唱をすること、唄うことで子供たちがどう変わっていくのかには軽くしか触れられていない。そこが惜しいな。マチューという大人の世界から見える出来事、事実だけが羅列されている。もう少し子供側からの視点があれば、もっと違う作品になっていたような気がします。でも、大人の先生からの視線だからこそ生きる、生徒の未婚の母親との淡い恋慕など、ニヤっとしてしまうエピソードもあったけどね。

ある意味、ウケや涙を狙っていない潔い姿勢だけに、正統派の作りになっている。
観終ってスグよりも、こうして時間を置いてからの方が胸にしみ込んでくるものがあるのも確かですね。
冒頭に、マチューの日記を持って訪ねて来る旧友が誰なのか、その時にはきっちり説明されていないのだけれど、それが最後にはしっくり来るのは、上手いなぁと思いました。

必見ではないかもしれないけれど、ご覧になっても決して損がない上品な作品です。劇場公開された際には是非どうぞ!
400名ほど入れる海遊館ホールがほぼ満席という盛況だったのも頷けますね。

おしまい。