春の日のクマは好きですか?

実は、ボクもゆで卵が好き!


  

いわゆるカワイコチャンではなく、個性的な若い女優さんペドゥナと「恋愛小説」で軍隊へ行く貸し本屋のお兄ちゃんを演じていたイドンハ。この二人が主演している。
いかにも「つくりもの」のお話しなんだけれど、観る人の心をほっとさせる、不思議な後味を残す作品ですね。ペドゥナのキャラクターに負う部分も大きいかな。
「こんなこと、あるわけない。でも、ひょっとしたらあえうかもしれない。イヤイヤ、やっぱりないな」観ながらそんなことを思ってしまう。

ヒョンチェ(ペドゥナ)は図書館で本を借りる。開いたページの余白にメッセージが書き込まれている「あなたは“春の日のクマ”が好きですか?」と。
そのメッセージが誰に宛てて書かれているのかもわからなければ、何時書かれたのかもわからない。
そしてメッセージは続く「次は●●を借りてください」と。
そんなメッセージが残されていたら、当然、次は指定された本を借りてしまう。果たして、次の本にも甘い言葉と恋を予感させるメッセージが書き残されている。そしてそこにもまた次の本が指定されている...。
そんなことの繰り返し。そして、書き込みにはヒョンチェが手にした赤いミトンの手袋のことが書かれていた。
最初は彼女もこのメッセージが自分宛てに書かれていたのか半信半疑だった。でも、ミトンのことに触れられて「これは私宛に書かれた!」と確信してしまう。

そんな時、軍を除隊になった高校の同級生ナムジン(イドンハ)に街角でばったり出会う。地下鉄(7号線?)の臨時運転手のナムジンは、ヒョンチェに心を寄せているが、彼女にとっては友人以下でも以上でもない(しかし、スト対策とはいえ、地下鉄の運転手が“臨時”でいいのか?)。

ヒョンチェは仁川(それとも金浦?)の高校を卒業して、ソウルにある巨大なスーパー、カルフールに勤めている。毎日が面白いわけではない。それどころか、ずっと立ち仕事でツライ。同僚は見果てぬ恋にウツツを抜かしているけれど、自分にはそんな浮ついた話しはない。今回のメッセージの主を“ビンセント”と名付けて話題にするのが、唯一の明るい話題。
こうして、ヒョンチェの心はまだ見ぬビンセントにどんどん傾いていく...。

ヴァーチャルな世界から突然やって来てヒョンチェの心を占めてしまった“ビンセント”、そしてリアルな存在としてヒョンチェの目の前にいるナムジン。
“ビンセント”の存在がサイバー空間の闇の中にいたり、ケイタイの向こう側にいるのではなく、いかにも古風な、何十年も前にさかのぼれそうな手法で現れたところがイイ(まっ、方法そのものには賛否両論があるでしょうが...)。 でも、この映画を観ていて不思議と古臭いとは思わなかった。
貸出管理をパソコンで行っている横で、書架から一冊の本を探すアナログな方法が繰り広げられている。
ちょっと飛躍した考えだけど、結局、恋やら愛やらは人間の心の持つ感情には、あらかじめプログラムされた一つの反応しかできないデジタルではなく、偶然の要素が色濃く反映されるアナログが似合っているということなのでしょうか?

決して、歌って踊れるわけではないけれど、ペドゥナちゃんは今後も要注目です。次回の日本上映作は「TUBE・チューブ」。報道によれば、日本の映画に出演が決まり、撮影中だそうです。
この映画、脇にも見知った顔が出ていて、図書館の貸出カウンターに座っていて動物好きな大杉漣に似ている人は、イオル?

今後、日本で劇場公開されるかどうか、ボクにはわかりません。韓国での興行成績は、もうひとつだったようですね。今後、ペドゥナが日本でブレイクするかどうかにかかっているような気がします。
コメディと言うよりはファンタジー色が濃い、なかなか面白い作品だと思いました。チャンスがあれば是非ご覧ください。

おしまい。