ウォルター少年と夏の休日

こんなおじさんがいたらいいのになぁ...


  

何とも言えない、ある意味“桃源郷”を描いた映画。

移り気で気紛れな母親に連れられ、ウォルター少年は年老いた大叔父二人が住む田舎の農園に連れて来られた。速記学校へ行くという母親は彼をこの農園に置き去りにしてしまう。「叔父さんたちは大金持ちだから、そのお金のありかを探るのよ」と因果を含められて...。

最初は「子供は苦手だ」と言っていた老人たちだが、徐々にウォルターに心を開く。そして、少年も気難しいだけだと思っていた二人の叔父さんが、実はとっても頼りになる男たちだと気がつく。
そのきっかけは、少年が納戸にあったトランクの灰の中から見つけた一枚の写真、そして夜毎夢遊病者となって湖畔へ出かける叔父の姿だ。

少年は、弟の叔父さんガスから、兄の叔父さんハブの武勇伝を聞かされる。心ときめくヒーロー列伝、そしてとろけそうな甘い恋。まるで、御伽噺を聞いているような気分になってしまう。

夢があって、そして悪い人が出てこない。ほんとうに映画らしい映画だと言える。

確かに、二人の叔父さんは、まるで夢を見続けているような行動に終始する。それは、この二人が全く無理をしていないように見えるからだろう。
ガスが語るハブの姿は、真実なのかフィクションなのかわからない。
すると、ウォルターは病院の待合室で見知らぬ女性から「あの二人は札付きのワルだよ。持っているお金は全部銀行強盗で手に入れたのさ」と耳打ちされる。
だけど、ウォルターはそんな言葉には耳を傾けない。目の前にいる二人は、そんなレベルを超越した存在になっていた。欲も徳もなく、自分たちが生きたいように生きる、そんな生き様に心酔していたのだ。いや“心酔”していたのは、この映画を観ていたボクなのかもしれない(きっと、そうだ)。

それにしても、良く出来たお話し。 どのエピソードも練られていて、嫌味もなく、夢がある。
二人の叔父さんがちょっと歳を喰いすぎているような気もするけれど、見た目よりもウンと若い二人の行動に歳は忘れてしまうかな。
ボクもこんな二人のように年を取れたらいいんだけどな(ちょっと羨ましいよ)。
この二人が紡ぎ出すお話しが本当だったのかどうかは関係ないと思う。そうじゃなくて、魅力的なお話しが出来るかどうか、人に夢を見せられるかどうかが大切なんだなぁ。

ラスト、ヘリコプターのエピソードは蛇足だったような気もするけどね。

ロバート・デュバル(ハブ)とマイケル・ケイン(ガス)の二人はもちろんよく知っている。ウォルター役のハーレイ・ジョエル・オスメントは“天才子役”だそうですが、今回初めてお会いしました。ちょっと爽やかすぎるかもしれないけど、芝居が出来る“子役”ですね。ラスト近く、農場に引き返してくる彼の姿に、ちょっと胸が熱くなりました。ただ、これからも“俳優”として活躍できるかどうかは、ちょっとまだわからないかな。

実はこの映画、劇場公開を前にして、試写会のお誘いを受けていながら、急用で行けなかった。こうなると、縁がなくて公開中も食指が動かなかったけれど、もう最後の最後になって観てきました。
平日の9時に上映開始のモーニングショウに、一体どれだけの人が来るのかと思っていたら30名ほどの入り。ちょっとびっくりしました。

本当は映画館の大きいスクリーンで観てもらいたいけど、もう上映は終わっています。ビデオやDVDでも充分お楽しみいただけると思います。

おしまい。