モナリザ・スマイル

価値観は時代とともに変わっていくんだねぇ


  

この春にソウルへ行ったとき、この映画「モナリザスマイル」が上映されていた。
ハングルで書かれている映画のタイトルを読むのはなかなか楽しい(もっともボクはほとんど読めないので、そーさんに読んでもらい、その音から映画のタイトルを類推するのだけど)。このモナリザもかなり難解だった。そして映画館に着いてから貼り出されているポスターなどを見て「この映画だったのか!」とようやくわかる。同時に上映されていた「ヒダルゴ」って何かと思っていたら、邦題は「オーシャン・オブ・ファイヤー」だった(これは邦題が悪いな、現代はそのまま「ヒダルゴ」だもの)。
韓国で外国物を観ることは、実はなかなかツライ。英語はもちろん早口だし、字幕がまたほとんど読めない。かなり悲しい状態。まぁ、どうしようもないけどね。その点、香港なら、漢字(繁体字)と英語の字幕が並んで出る。これはありがたい。しかも、広東語の作品にもちゃんと字幕が出るところが、親切・丁寧ですね。

まぁ、それはともかく「モナリザ」のお話し。
何時の間にかジュリア・ロバーツも学生ではなく、若い子を教える教授役をするようになったんだなぁ(先日の新聞に、双子を身ごもっていると報道されていたけど...)。時の流れを感じます(最近こんなんばっかり!)。

1953年、太陽サンサンのカリフォルニアの大学から、東海岸の歴史ある女子大学に一人の女性が講師として採用される。今まで、西海岸の新しい考え方で、自由奔放とも思える生き方を歩んできた。それがいきなり超保守的で、「良妻賢母の養成」を唯一の目的とするこの大学。新しい学期の授業が始まる前から“波乱万丈”の予感が...。
この現代美術史の講師キャサリン・ワトソンこそがジュリア・ロバーツ。年齢的には大学で教えていてもおかしくはないけれど、この人、学究肌は似合わないな。

そして、キャサリンを迎える大学は、学生も教授陣も多士済済。
下宿先の二人も一筋縄ではいきそうもない。だいたい礼儀作法を教える授業なんてジョークじゃなく本当に存在していたのだろうか? この先生、レニー・ゼルウィガーかと思った。その面影といい、声の感じといい(本当はマーシャ・ゲイ・ハーデンという方でした)。そして、学長ときたら、自信と責任と規律が服を着ているような筋金入りの保守的ばぁさん。彼女は凄い。
それよりも強烈なのは学生諸君だね。主な人物は四人。生意気この上ない同窓会長の娘ベティ(キルスティン・ダンスト)。頭は切れるが自分の価値を計りかねて踏ん切りがつかない秀才ジョーン(ジュリアン・スタイルズ)。色香が漂う女学生ジゼル(マギー・ギレンホール、「セクレタリー」のお姉ちゃんでしたね)。そして、一人ルックスが劣ってコンプレックスを抱いているチェロ弾きコニー。この四人のキャラクター配分は絶妙。

中でも、最も興味深いのは秀才のジョーンだろう。エール大学の法大学院への道を許されていながら、それを袖にして結婚してしまう。
この映画は、彼女だけではなく、1950年代、今から半世紀前の若い女性の価値観がどうだったのかを如実に物語ってくれる。自分の考え、周囲からの評価、そして両親からの期待。それら全てに応えようと必死になってもがき苦しむ。そして出した答えは、現代ではとうてい考えられないもの(つまり結婚)。
しかし、それだけではない。最も保守的だと思われていたベティはエンディングで凄く進歩的(?)な行動に出る。彼女の行動によって、50年代からアメリカでは現代に通じる考え方の芽が出ていたのか。そんなことをちびっと匂わせてくれる。

まぁ、考えてみれば、こんなに狭い日本でさえ大阪と東京では考え方が大きく違う。ましてや陽気な西海岸と、冷蔵庫のような東海岸では全ての面で大きく違っても当然だよね。

学生たちはそれなりに真剣にパートナー探しに奔走する。そんなエピソードが巧みに織り交ぜられているのに、キャサリン・ワトソンの恋の行く末は、なんだかとってもお粗末。「現代風の考え方をすれば、いい相手を捕まえられない」そんなことを彼女は体現していたのかな。それにしても彼女の恋は、どうも深みがなく陳腐だったような気がする。
とにかく、若いパワーにたじたじとさせられて、ジュリア・ロバーツは全く輝いていない。いかに彼女でも、若く豪華なキャストに束でかかられては、とても太刀打ちできなかったようですね。

他には、ファッションが素敵。女性はもちろん、若い男性陣の姿がボクには新鮮だった。少し前に観た「エデンより彼方に」もそうだったけど、50年代、60年代の上流階級のファッションはなかなかいいですね。
「スパイダーマン2」で酷評したキルスティン・ダンストが嫌味たっぷりの学生役を好演。そうだ、この子はかわいこちゃんよりも、こんな毒気含んだ役こそ似合っている!

観ても観なくてもどちらでもいい作品。感動とか楽しみとは別の次元に存在してるけどね。梅田ではOS劇場でまだ上映しているハズです。お時間が余っていればどうぞ。
価値観の多様化している現代だからこそ、皆が唯一の目的(=価値)に向かってまっしぐらの時代のお話しを観る意味があるのかもしれませんけどね。

ラスト。
生徒たちが、大学を去るキャサリンを自転車で追いかけるシーンはそれなりに、ジーンとしますよ。

今回は広島に新しくオープンした「バルト11」で拝見しました。テイストはソウルのMEGABOXのような感じ(こんな例えで誰がわかるのか?)。但しチケットブースの数が圧倒的に不足。朝早くからこんなに並ばされたら、意欲を失います。ヒマな時は閉めていてもいいけど、混んでいる時にはきちっと対応できる体制を取ってもらいたいですね。
早朝の上映だし、お客さんは片手ほど。これはまぁ仕方ないですかね。

次回は話題先行のカンヌのパルムドール受賞作「華氏911」。広島での初日の初回の模様をレポートします!

おしまい。