箪笥

わかるまで何度でも観なさい


  

珍しく前売券を買っていた。
「いつ観に行こうか、どうしようか」なんて考えているうちに梅田ピカデリーでの上映が終わってしまい、ショックを受けていたら、なんと上映館がブルク7にグレードアップしていた。う〜ん、こんなこともあるんやなぁ。
で、ようやく観てきました。

「恐さ」とは何か? どうしてこの「箪笥」を観て恐いと思うのかを考えていた。
確かに恐いのは間違いないけれど、その恐さの源は「得体の知れないものへの恐れ」なのではないだろうか? 
どうして箪笥の中に同じ洋服が何十枚もあるのか? そして流しの下に泥だらけの少女が隠れているのか? どうして、そこに半分に折れた髪留めが落ちているのか? どうして、弟夫婦の奥さんが泡を吹いて倒れるのか?
この映画は確かに恐い。だけど、あまりにも説明が少なすぎて、全てがわからない(ボクだけ?)。
だから、「どうして?」を常に考えてしまう。その結果、わからないものが次々に提示され、戸惑い、おののき、そして恐くなってしまう。辻褄が合えば「なんや、そんなことか」で終わってしまうのに、それが出来ないからパニックになる。
そういう仕組みなんじゃないかなぁ。

が、普通は映画を観終わった時に「そうか、そうやったんか!」と全てが納得できるものなのに、この「箪笥」は、観終わっても全てのピースがぴたっと収まってくれない。
上に並べた「どうして?」がボクの心の中では解決されないままに残ってしまった。

そうか「わかるまで何度でも観なさい」ということなのか!

登場人物はとても少ない。
二人の姉妹。父親。後妻。それに弟夫婦。主だった出演者は以上。
どうやら、スミとスヨンのこの姉妹と新しいお母さんは上手く行っていないようだ。
とにかく、状況を説明してくれるセリフが極端に少ない(いや、ほとんど無い)。だから、画面を食い入るようにように見つめなければらない。そうして、どんどんこの映画の術中に嵌り込んでしまう。
そう言った意味では、この映画「とても良く出来ている」のだ。

わけがわからないままにびびってしまい、震え上がるんだからね。
200名ほど入れるスクリーンに60名ほどのお客さん。お話しが佳境に入った頃に、何人か出て行った。
今まで「退席者続出!」なんて宣伝文句を目にしたことはあったけれど、ほんとに出て行った人を見たのは初めて! まぁ、別の映画で、あまりのしょうむなさに帰ってしまった人はいたけどね。
アクションとかCGとか音響で盛り上げといての恐さではなく、山間の静かな山荘で淡々と繰り広げられる不気味さ。それなりの心の準備が必要かもしれません。

姉スミを演じているイムスジョンは、この後「...ing」でキムレゥオンと共演。ちょっと捉えどころがない中性的で不思議な魅力を持っていますね。
今や売れっ子女優の仲間入りを果たしたムングニョンが、妹のスヨン。これくらいの年齢の少女はどんどん雰囲気が変わっていきますね。今後にますます期待。彼女も「幼い花嫁」でキムレゥオンと共演してます。
陰の主演は後妻役のヨムジョンアでしょうか。メイクできつそうな顔立ちになっていますが、きっとかなり美しい方なんでしょう。「H」の女刑事役の方ですね。
お父さんのキムカブスも控え目な演技で効果を高めています。このお父さんの先妻さんとの別れ話しだけで、映画をもう一本撮れそうな気もしますが...。

最後に、この映画を語るときにどうしても触れておきたいのが邦題の「箪笥」。
原題は「薔花、紅蓮」(英題:A Tale of Two Sisters)。確かに、映画では箪笥が大切なキーワードにはなっているけれど、「そりゃないやろ!」勘弁してよ。もうちょっと考えて欲しかったなぁ。そう思っているのはボクだけではないと思います。

確かまだ、梅田ではブルク7、動物園前のシネフェスタでも続映されていると思います。暑い夏に、心まで凍てつきそうな一本。まずまずのオススメだと思います。
今まで観た韓国のホラーでは一番恐かったです、はい。

次回はペドゥナ主演の「子猫をお願い」です。

おしまい。