ペジャール、バレエ、ルミエール

もう少し見せてよ!


  

日ごろの行いから見ると、ボクとバレエは縁遠く見えそうだし(まぁ、実際に縁遠いんだけど)、こんな映画は観ないと思われるかもしれないけれど、映画で観るバレエは嫌いではない。一度ナマで拝見したいとも思っている(チケットがもう少し安かったらなぁ)。これ以上、趣味の範囲を広げてどうすんねんとおっしゃる声も聞こえてきそうだけどね。
関西では何時になるか知らないけれど「バレエ・カンパニー」という映画も公開を控えていて(東京ではもう上映してるのかな?)、この作品も是非拝見したい。

この「ペジャール、バレエ、ルミエール」という映画で特筆したいのは、ポスターがとてもいいこと。
実際にあるシーンをイラストで起こしている。黄色がバックで、数人の女性のダンサーが固まって、ペジャールの指導を受けているシーン。いいなぁ。

バレエの仕組みを理解してないけれど、どうやらこのペジャールと言う人はカリスマ振付師で、クラシックバレエではなく、モダンバレエのようですね。
で、映画はこのペジャールが率いるバレエ団が新しい公演を控え、振り付けを完成していく過程と公演初日を迎えるまでを追っている。但し、主人公はダンサーたちではなく、あくまでもペジャール。カメラは、この人をずっと追っている。

身体が動くわけでもない、ちょっとお腹が出たこの老振付師のどこからこんなエネルギーとアイデアが湧いてくるのだろう?
そして驚くのは、彼の自信の源泉はいったいどこにあるのかということ。
芸術的に、そして興業的に彼のバレエがどれだけ価値があり、成功を収めているのか。ボクは全く知らない。でも、このペジャールの行動はほとんど迷いや躊躇はない。そこにあるのは自信。凄いな。
そんな彼の行動を見ているだけで、彼が超一流のものを持っているのだと納得させられてしまう!

ダンサーたちに対して厳しい口調で注意したり、難しい注文を出したりはしていない。ある時は好々爺然としている。ちらっと厳しい一面を晒すのは、衣装のデザイナーとのやり取りだろうか。
彼の頭の中にある舞台のイメージ。それをダンサーたちはペジャール自身から振り付けという形で与えられ、体現化していく。でも、衣装はちょっと違う。デザイナー頭の中にあるイメージと、ペジャールの頭の中に描かれているものは全く別のものなのだ。それを具体化していくデザイナーも敏腕なんだろうけど、間違いなくかなりアタマの痛い作業なんだろうな。ペジャールの口から語られるイメージを拾い、稽古場で繰り返される踊りを見てデザイナーなりのイメージを作り上げていく。
ようやく、自分の中で咀嚼し、そのイメージを具体化する。でも、下手したらペジャールから罵倒されるだけだ。結局、最後は時間との戦いに追われることになるんだろう。

映画ではその一部しか写されていなかったけど、様々なやり取りがあったはず。
その姿を見ながら、衣装だけではなく、大道具小道具の舞台装置や照明なども同じプロセスを経ているんだろと思った。
きっとみんな思ってたんだろうな「ペジャールの頭の中を見てみたい!」と。

こうして、彼の舞台は初日に向けて完成度を高めていく。
そう、彼は単なる振付師ではなく、自分の舞台の総合ディレクターであり、プロデューサーでもあるんだ。

本当は、もう少し、もうほんの少しでいいから本番の舞台を見ていたかったな。そんな気もします。
確か6月に大津で公演があったはず。行けば良かったなぁ...。

おしまい。