炎のジプシーブラス〜地図にない村から〜

ドラマはないがリズムがある


  

暑い、暑い、暑い。言葉に出しても出さなくても、暑いものは暑い!

この日は河内長野まで遠征。この街にある市民会館・ラブリーホールへお邪魔するのは二回目。前回はもう随分前だった「上々颱風」のコンサートを聴きに来た(だったと思う)。あの頃はスカパラも好きだったなぁ...。
このホールで映画の上映会。広くて立派な大ホールに、ごま塩のゴマのようにまばらな人影。ちょっと地味な作品だけど、もう少し入っててもいいんとちゃうのか?

ルーマニアの寒村。
この村にある湖のほとりに馬車が停まる。馬車を操っていた少年が凍りついた湖の上を駆け出し、氷の割れ目からラッパを拾い上げた...。
そなシーンからこの映画は始まる。そしてスクリーンではまるで夢を見ているような映像が繰り広げられる。
この少年が住む村は、取り立てて何もない貧しい村。住民はロマ(ジプシー)。鉄道の線路は通っているが、駅はおろかプラットフォームもない。汽車に乗る必要があるときは合図して停まってもらい、客車によじ登るのだ。

ドイツ人の若い音楽プロデューサーが、そっと耳打ちされる「凄腕のミュージシャンがいる村がある」と。
彼はクルマに乗り、その地図にも載っていない村を探し始める。

このプロデューサーによって見出されたバンド「ファンファーレ・チォカリーア」 彼らはあんまし練習しない(いや、ほとんどしない)。練習とか稽古は必要ない、彼らにとってはこのバンドは生活そのものなんだから。

ストーリーはない。
このバンドの成功談でもない。淡々とツアーの日々と、オフで村でくつろぐ姿が交互に捉えられる。
メンバーは、世に出るて有名になったことをさほど喜んでいるようでもなく、かと言って疲れている様子でもない。なんだか、全てが自然体。観ているこっちが拍子抜けしてしまうような態度。
舞台で繰り広げるパフォーマンスには迫力があるけれど、彼らには舞台衣装という概念がなく、そのままの格好で演奏を行う。そんなところも、あくまでも自然体なのだ。

彼らが繰り広げる舞台に、パフォーマンスに、目が点になるほどびっくりしたけれど、感銘したり酔ったり、またCDを買おう思うこともなかった。
なんでかな?

いや、その答えはわかっている。
巨大な1,000名以上収容のホールに70〜80人ほどのお客さん、しかもそのほとんどがお上品な方々。
映画が悪いのではなく、環境が悪いのだ。これが、100名も入れば一杯になるようなスクリーンで、しかもノリがいいお客さんが一杯で立ち見もいる、そんな環境で観ていたら全く違う印象を受けたのかもしれない。
もちろん、ラブリーホールが超満員だったら、もっともっとコーフンしていただろうけどね。

しかし、この村に根付いているブラス文化は凄いゾ。
楽器をさも簡単に直してしまう職人さんがいて、あちこちでブラスの響きや太鼓のリズムが漏れてくる。こりゃ、生活の一部とはいえ、ほんまに凄い。
バンドの連中が一軍だとすれば、村に残る男たちの二軍や三軍といった予備軍たちの実力もあなどれないんだろうなぁ。

この日は先行上映。秋になったら大阪の映画館でも上映されるようです(9/18〜シネ・ヌーヴォ)。この映画は、絶対に混んでいる時に見た方がいいですよ!

次回は、こき下ろしているのに、何故か観に行ってしまった「スパイダーマン2」を紹介します。

おしまい。