テッセラクト

これはカオス的と言うのか


  

まるで綱渡りのようなタイムスケジュールで映画館をハシゴする。
この日は、愛馬のオースミハルカ号が米子ステークスに出走するので、WINSにも寄らなければいけない。あぁ忙しい。
ツインビルのリーブルからテアトルまで急ぐ。どうにか間に合った。フーッ危機一髪。

前日に封切られらたばっかりの「テッセラクト」。お客さんの入りはどうかな、と思ったら、あんまり入っていない。ちょっと寂しいぞ。タイの映画とは云え、ほぼ西洋人が主役のようなもの、タイはバンコックの街を借景に出したようなものか。

ほとんど何の予備知識もなしに観たのだけど、これがね、なかなか面白い。
バンコックの下町にある汚いホテルが舞台になっている。ホテルと言うよりも“宿屋”と呼ぶほうが合っているかな。このホテルに集う客と、売春婦の手引きをする少年が主人公の群像劇。いや、それぞれバラバラの存在だった各々が、ラストに向かって収束して行くストーリー。

ある部屋では、イギリス人の青年が部屋で時間が来るのを待っている。また、別の部屋では組織に雇われた殺し屋の女も時間を待っている。もう一つの部屋では西洋人の女が心理学のケーススタディのインタビューをビデオに録画している。
この三人を繋ぐのは、このホテルのボーイ兼掃除夫の少年であり、弁当箱ほどの大きさのヤクだ。
そこに、様々な人間模様が流れるように入り乱れ、全く別の存在であった人たちの人生が混じりあう。この描き方が本当に“流れる”ようで、すんなり飲み込める。

別にメッセージ色が濃いわけではない。かと言って、アクションでもない。もちろん、感動作でもない。
いかにも混沌とした、まるでまとわりつく汗のような感じだ。時にはさらっと流れ、時には皮膚に粘りつく。そんな不思議な味わいが、蒸し暑いバンコックにピタリとあてはまっている。
難しいことは何も考える必要はない。そんな映画だと思う。
「メメント」や「21g」のように、バラバラに砕いた時系列を繋ぎあわせていく手法らしいけれど、正直に言ってそれはさほど成功していないように見えた。

この映画のタイトル「テッセラクト」とは、どんな意味なんだろう?
混沌としたカオスを表しているのか、それとも...。
(調べてみたら“四次元立方体”という意味だそうです)

そんなに街の風景は出てこないのにもかかわらず、いっぺんバンコックに行こうかな、そんな気にさせる映画です。まずまずのおすすめ。お時間があれば、ご覧になっても損はしないような気がします。

この映画、監督(オキサイド・パン)やスタッフは香港とタイ、製作は日本、だそうです。

次回は、ようやく観てきました。チョンジヒョンの主演作「4人のテーブル」を案内する予定です。

おしまい。