フェイス/Face

思わず声が漏れてしまう


  

前の晩は新村(シンチョン)で、発酵させたエイの刺身(ホンオ)を食べた。
食べたと言うよりも、一切れ口にしただけでギブアップ(情けない...)。あの口一杯に広がる匂いが...、あかん。
このホンオは全羅道(チョンラド)には無くてはならない料理らしくて、その発酵具合によって三日モノとか、10日モノ、30日モノなどいろいろあるそうです(30日モノなんて、想像しただけで身悶えしてしまう!)。
お店の人も、ボクがどんな顔をして食べるのか、興味深々だった。そんな注目されている中で、ギブアップしてしまうのはちょっと辛かった。でも、ボクのお箸が進んでいないの見て、豚の蒸したものをサービスで出してくれて、助かった(ありがとうございます!)。
このお店はホンオの専門店で、ホンオが食べられないボクには辛かったかというと、実は凄く気に入った。それは、ここのドンドンジュ(一種のマッコリ・濁り酒)がものごっつい美味しいのだ。普通はボトルで出てくるけれど、ここのドンドンジュは広口の甕に入って出てきて、それを柄杓でついで飲む。この柄杓が上等なお店だと瓢箪を半分に割ったものなんだけど、ここはプラスチック製。そんな庶民的なお店です。
この席で、ソウルで日本語の教師をしているオカダさん(仮名)と、またしても映画の話しになり「イミヨンが10代のころ如何にかわいかったか」を教えていただいた。そこで、近くにある中古ビデオ屋へ直行し、彼女のデビュー映画「幸せは成績順じゃないでしょう」を探したけれど、当然「ない」。この店のおばさんと顔見知りのオカダさんが「何とかならないかなぁ」と聞いたら、このおばさん平然な顔をして「要るんだったら、明晩の9時に用意する」とのこと。いやぁ、驚いた。凄いなぁ。で、実際、ほんまに手に入ったから感動した!
今回はタッパルに続いてホンオも駄目で、いやはや韓国の料理の奥深さを改めて知らされました。

で、この晩は、新村でイミヨンの「幸せは成績順じゃないでしょう」のビデオを受け取ってから、東大門にあるフレヤタウンというファッションビルまで急いで移動。このビルの10階にあるMMCというシネコンで「フェイス」を観る。 この映画、封切ってそんなに日が経っていないのに上映しているスクリーンはほとんどなくて、便利な場所にあるのはこのMMCだけ。韓国ではほんとに人気とスクリーンの数は正比例しています。いい映画かどうかではなく、お客が入るかどうかが重要なんですね。
この日は土曜日、そして22時からの回だったからか、MMCのチケット売場は凄い人が並んでる。ようやく順番がまわってきて、たどたどしく映画名を伝えると、カウンターのお姉さんが「日本の方ですか?」って綺麗な日本語で尋ねてくれる、喋れるなら胸の名札にマークでも付けてくれればいいのに(それは、フライトアテンダントか)。

小さいスクリーンに30名ほどの入りかな。
ここは出来て随分経つシネコンだから、シートや床はそれなりに気合が入っている。こうやって比べてみると、MEGABOXはきっちりメンテナンスしているんだと妙に感心してしまった。

「銀杏の寝台」で悲運の武将を演じ、すっかりボクのハートを掴んだ、“耐える男”シンヒョンジュンが主演のサスペンス・ホラー。このシンヒョンジュン、実は「Blue(邦題:SSU)」で見せたような、ちょっと三枚目的な面白さが地なのかもしれないけどね。でも、飄々としたところも魅力です。
ヒョンミン(シンヒョンジュン)は、どこか大きい組織の法医学研究室に勤めている。彼の専門は白骨化した頭蓋骨から、生前の顔を復元すること(こんな仕事もあるのかと、素直に驚いた)。でも、ヒョンミンは重い心臓病に冒されている娘ジニのために、職を辞し、娘のそばについてドナーの出現を待つことにする。
そんな彼の自宅に、研究室の若い後輩ソニョン(ソンユナ)が頭蓋骨を持って押し掛けてくる。一旦はその作業を断ったヒョンミンだが...。その晩から、ヒョンミンの身の周りで不思議なことが起こり始める...。

これね、ガラガラの日本の映画館で、シラっとした雰囲気で静かに観ていたら、きっとそんなに恐くない。間違いない。わずか30名ほどとは言え、きっちり声を出して反応してくれるノリがいいソウルの観客と一緒に観たから“むっちゃ、恐かった!”(途中までね)。
画像の効果もさることながら、音が恐い。効果音が、心を盛り上げてくれる。 結局、誰に省みられることなく、砂の中で朽ちていった(白骨化した)人の亡霊が「復元して〜!」って叫んで訴えているんでしょうね。

ただ、物語りの語られ方が、何かちょっと粗いねんなぁ。特に、中盤以降の謎解きに入ってからは緊張感がスゥ〜っと薄れてしまう。惜しいな。
顔を復元するという、得難いキャラクターを主役に持ってきているだけに、もう少しひねりも欲しかった。予想を覆すような仕掛けも無いしね。でも、これは贅沢な望みなのかなぁ?
途中までは充分に恐いし、ボク自身もつられて声も出てしまった。寒イモも出たョ。

ヒョンミンの後輩ソニョン(ソンユナ)はどこかで会ったことがあるはず...。でも、思い出せない。そんなに若くはないけれど、なかなか気に入りました。
シンヒョンジュンとどこで絡むのかと期待していたんだけどなぁ...。

いつか日本で上映されるかもしれません。出来れば、お客さんが多いときにお出かけになって、一緒に声を出して、大袈裟に恐がって、盛り上がってご覧くださいね。

次回は、MEGABOXで観た「知っている女」を紹介する予定です。

※ちなみに、上の方で紹介しているビデオ屋さんは、地下鉄の新村駅を出て東へ100メートルほど、ミドリ劇場の手前だったか行き過ぎてからだったかは忘れてしまったけれど、同じ並びにあるので、行けばわかります(多分)。いつでもリクエストに応えてくれるのかどうかは保障できません。

※追記※ 2005年の3月にもう一度新村へお邪魔したところ、ここで紹介している中古ビデオ屋さんは店仕舞して、花屋さんになっていました。残念ながら、今はもうありません。

おしまい。