ハッピーエンド

チェミンシクはすごいなぁ


  

先日まで梅雨時らしくない爽やかな日和が続いていたのに、どんどん蒸し暑くなってきた。台風も接近中で久しぶりに雨が降った。そして、昨夜は汗まみれになって目が覚め、このシーズン初めてエアコンのスイッチをON(おかげで朝までぐっすり)。こうやってどんどん季節は進んで行くんやなぁ。
季節と言えば、ゴールデンウィークに植えたキュウリがどんどん実をつけてくれている。このところ毎朝2〜3本は収穫できるから嬉しい。2〜3本ならたいしたことがないように思うけど、毎日収穫されるということは、毎日確実に食卓に載ることになる。おかげでビタミンCの摂取はばっちりです。スイカもいつのまにか随分大きくなりました。ちなみに遅れて植えたゴーヤはまだツルを伸ばしている状態です。かぼちゃはまだまだこれからやね。

さて、今回は韓国の映画で「ハッピーエンド」。
このそう新しくもない映画(韓国では99年12月公開)がどうして今劇場公開されるのかその意味が若干不明だけど、不満ではない。ただ、気になるのは「スキャンダル」と時期が重なるだけに、チョンドヨンが「ただ脱ぐだけの女優さん」とだけ認識されてしまうとしたら、それはごっつい悲しい。

この映画を実際に観るまで、チョンドヨンの主演作の一本という認識しかしていなかった。
でも、この映画、実はチョンドヨンの映画ではなく、チェミンシクの映画だったんだ!

チェミンシク演じるミンギという中年の入り口に差し掛かった男が悲しい。
古本屋に入り浸り、店主に煙たがられながら床に座り恋愛小説を読みふける。職業は無職。どんな経緯があったのかはしらないが、ミンギはリストラされている。今は雇用先を探して奔走(?)している。この日も面接を受けてきたのだろう、スーツにネクタイ姿で古本に埋もれそうになりながら読書にいそしんでいる。
実は物語りの世界に没頭しているわけではないんだろうな。言葉は悪いけれど、本の世界に現実逃避している。古本屋を追い出されて向かう先は保育所。まだ赤ん坊の愛娘を迎えに(受け取りに)行く。マンションに着き、粉ミルクを用意するミンギの姿もまた悲しい。その後も、洗濯を干す姿、牛乳の紙パックを切る手つき、テレビドラマに見入ってしまう目つき...。どれも妙にはまっていて、ミンギは主夫そのもの。これならもう無理に再就職する必要はなく、家に入ればええやんとさえ思ってしまう。

でも、実はこの映画、冒頭にこの夫婦が既に破綻していることを明示している。
ミンギの妻・ポラ(チョンドヨン)は、不倫にいそしんでいる。その相手は彼女の同級生だった男・イルボム(チュジンモ)。情事を終えて深夜に帰宅するポラ。彼女に対して何も言わないミンギ。
やがて、ミンギはポラとイルボムの関係に気付く。そして、ミンギが下した決断は...。
どうしてこの映画のタイトルが「ハッピーエンド」となったのだろう?全て上手く行き、マンションも保険金(?)も手にすることが出来たミンギにとってのハッピーエンドなのか、それとも...。

とにかく、観終わってスッキリすお話しではないし、大きな衝撃を受けるわけでもない。まして、意外などんでん返しがあるわけでもなく、何かもやもやとした、ザラっとしたものが心に残る。こんな稚拙な工作がバレずに済むのかも疑問だ。
でも、考えてみたらこのお話しは、犯罪ものではなくミンギの心の葛藤を主眼に描いたもの。愛情がやがて憎悪に変質し、そして殺人にいたるまでの心の動き。それを少ない台詞で、ほぼ表情だけで演じきったチェミンシクに“拍手”。
チェミンシクという人は、ほんとに上手い俳優さんです。

この映画の売りは、このチェミンシクの演技と韓国のトップスターであるチョンドヨンのあられもない姿を拝見できることの二点でしょうね。ストーリーそのものは、特に取り上げるほどでもないと思う。
チェミンシクは「オールドボーイ」が、そのうち日本でも公開されると思いますので是非ご覧になっていただきたいです。「オールドボーイ」のチェミンシクも凄いです!
チョンドヨンは「接続」「我が心のオルガン」「ボクにも妻がいたらいいのに」がオススメ。特に「我が心のオルガン」の彼女には驚かされてしまいます。この機会に是非スクリーンで上映していただきたいものです(イビョンホン、イミヨンも出てるしね)。

関西では動物園前シネフェスタ4のみの上映。みんなチョンドヨン目当てでお越しになるのかと思っていたら、意外や意外、ほとんど女性のお客さんで男性は数えるほど(レディースデイのせいもあると思うけど)。40名ほどの入りだったのにも驚きました。もう少し上映しているのかと思ったら、6/18に終了してしまいました。

この「ハッピーエンド」を観ながら、なんだか我が身を振り返ってしまった。
今、勤め先を辞めたら(辞めさせられたら?)、ボクもミンギのようになるのかなぁ?

次回は、ポルトガルからやってきた「ヴァンダの部屋」にご案内する予定です。

おしまい。