オーシャン・オブ・ファイヤー

馳男さんには汗臭さが似合う


  

拙宅の近くにミニチュアポニーのアズキちゃんが棲息しているのは、以前にご紹介したと思う。かわいいアズキちゃんも、北米大陸を駆け抜けるムスタング、アラブの良血馬も、いななきはほとんど同じなんだなぁ。この映画を観ながら、このところ会っていないアズキちゃんのことばかり思い出してしまった。

ほんとにあった実話なのか、それともフィクションなのか、はたまた伝説なのか。そのへんはよくわからないけれど、このお話し、荒唐無稽に見えながらそこそこ面白いホース・ムーヴィー(そんなジャンルあるのか?)。
主人公は“ローハンの王”アラゴルンこと馳男さんことヴィゴ・モーテンセンが演じるフランク・ホプキンスなんだけど、本当は大きいブチの鹿毛のムスタング(野生馬)“ヒダルゴ”に違いない。

白人の父とインディアンの母を持つフランコは、相棒のムスタング、ヒダルゴを駆ってアメリカの西部を縦横無尽に駆け回り、何千キロという長さの馬のレースに出たり、それこそ伝書鳩のごとく手紙を届けるために走り回っている。
そして、時は流れフランクはうらぶれた飲んだくれのオヤジに成り下がり、各地を巡回する「大西部ショウ」に出演し、しがないカウボゥイ役で口に糊を貼っている...。
そんな彼の前にチャンスが転がり込んできた。アラブの大富豪が「世界一の名馬」ヒダルゴに挑戦状を叩きつけてきたのだ! 言うなれば国際レース。対戦相手はベドウィンの酋長が誇る純血のアラブ種。距離はなんと4,800キロというから、腰を抜かす。そんな4,800キロもの距離を他の馬よりも速く走ることに一体どんな意味があるのか、よく理解できない。
最初はそんな話しを真に受けていなかったフランクだが、友人たちの後押しもあり、アラブ行きの船に乗り込む。まぁ、なんて言う優雅なお話しだろう。
そして、4,800キロの大レース、その名も“オーシャン・オブ・ファイヤー”がスタート!!!

アラブの大地が舞台。灼熱で日陰すらない砂漠、一夜で全てを飲み込む砂嵐や参加者たちの欲得や陰謀に巻き込まれながらもゴールを目指すフランクとヒダルゴ。
砂嵐はもう一つやったけれど、それ以外は本当に凄い凄い。大人を鞍上にして、一日中走り続け、それで4,800キロった考えただけでもぞっとする。こりゃ、故障しない方がおかしい。
そして、もうすぐゴールというその日。ヒダルゴは行き倒れ、立ち上がろうとしない。ゴールできるのか?
でも、だんだんわかってくる。
この映画において、このレースの結果そのものはそんなに大切な意味を持っているわけではない(まぁ、負けるよりは勝つほうがいいのに決まっているけど)。

結局、この作品は“筑前炊き(ごった煮)”状態になっていて、正直何がなんだかよくわからなくなっていることがわかった。
前半とラストで、アメリカ先住民(インディアン)の問題とフランクの出自のことが語られたかと思うと、レースそのものではフランクはまるで星条旗を背負って疾走する。かと思うと淡い淡いベドウィンの酋長の娘との恋が語られ、優駿を巡る陰謀、そして過酷な砂漠の自然...。
もう、詰め込めるもの全部詰め込みましたって感じです。それがね、ちょっとスマートさに欠けるのが惜しい。
観終わった直後は、過酷なレースを“並走”した(単に傍観していただけやけど)コーフンからか、なんだか気分的に高揚しているんだけど、思い返してみるとちっとも心に残るものがない。ちょっとしたアクション映画を観ただけって感じ。

本当は巨大なスクリーンでご鑑賞いただきたいのですが、もうロードショウ公開は終了してしまいましたので、興味があればビデオやDVDでご覧下さいな。

おしまい。