フォーチュン・クッキー

こんなクッキーなら一度食べてみたい


  

映画の賞はアカデミー賞も含めて、そんなに興味はないけれど、今年もカンヌ映画祭ほど驚きに満ちたものはなかった。
「華氏911」のパルムドールは政治的な色合いが濃いので、まぁいい。
韓国映画「オールド・ボーイ」のグランプリ受賞には正直驚いた。良くも悪くもチェミンシクの映画で、なおかつ言葉が不自由な環境で拝見したことを差し引いても“よくわからない映画”だった。ボクの印象の中では“餃子の映画”だったからね。
男優賞に14歳の中学生が輝いた。この映画「みんな知らない」は、先日どこかで予告編をやっていた。その予告編からは「チャンスがあれば観ようか」という程度の印象しか受けなかった。配給会社は、それこそウハウハやね。
そして女優賞はマギーチャン。しかも香港映画ではなく、フランス映画での受賞だけに値打ちがあると思う。
みなさん、おめでとうございます!

さて、この映画もこの日で上映が終了。
面白そうだなと思っても、なかなか足を運べない映画って確かにある。それがテアトルやガーデンで上映されているのであれば、少々の無理をしても駆けつけるのだけれど、それがブルクやピカデリー、ナビオだとどうも行きそびれてしまうことが多い(ような気がする)。

それにね、この映画、時間つなぎのために選んだようなものだった。しかも500人は入れる大劇場に20名もお客さんは入っていなかったけれど、なんともカラッと面白い、良く出来たホームコメディ(?)に仕上がっていた。
誰ひとりとして知っている俳優さんが出ているわけではないし、主演の二人が特別チャーミングなわけでもないんだけどね。
あぁ、なんとももったいない!

お互いに反目する母・テス(ジェイミー・リー・カーティス)と娘・アンナ(リンゼイ・ローハン)(どうも、この日は親子がテーマになっている映画ばっかり観ているような気がする)。
3年前に夫に先立たれている。今では娘は高校生になり、まだ小学生の息子との3人暮らし。でも、精神分析医としてそこそこの収入(いや、かなり?)があり、不自由な生活を送っているわけではない。近々再婚しようと準備をしている。
問題は母親ではなく、娘の方か。何不自由なく育ち、頭もそんなに悪くない(と思う)。それが、ちょっと謙虚さを欠き、学校や教師、親に反抗的になっている。そのまま、どこにでもいそうな今時の高校生なわけだ。
その母娘が、ひょんなことで、心が入れ替わってしまう! あぁ、これって、まるで懐かしの「転校生」(大林宣彦監督作品)の親子版。

心と身体が入れ替わるのは、別にびっくりするような設定ではないけれど、スクリーンで繰り広げられるドタバタがどれも凄く丁寧に作られていて、面白くて仕方ない。計算されているだけに、入れ替わる前の生活が効果的な伏線になっていて、思わず「上手い!」と唸ってしまう。
母も娘も知らない俳優さんだったけれど、演技も上手い。特に娘の心が入ってからの母親は出色の出来。

母親(外見は娘ね)が自信満々で臨んだ試験で、上手く解答できなくて「こんなの実生活で役に立たない」とつぶやいたり、まんまとワナにはまりカンニングの濡れ衣を着せられたり、ズルをして全問マークした後で、憎たらしい友人の回答用紙を消しゴムで全部消したりする。これって、母親の性格をそのまま娘が受け継いでいるんやなぁ、腹を抱えて笑ってしまった!

ロードショー公開は終わってしまったけれど、チャンスがあればどうぞ。ビデオやDVDでも十分楽しめる作品だと思います。
この作品は、著名な俳優が出ていなくて大々的に宣伝されなかったけれど、内容はピカイチ。その面白さは折り紙付きです。「何か面白い映画ないかな?」って時に是非どうぞ! オススメですょ。

おしまい。