スキャンダル

ヨン様の映画


  

試写会にお邪魔するのは久しぶり。しかも、今まで考えられなかったような環境で注目を浴びている韓国映画「スキャンダル」。
一人の韓国人俳優がここまで日本のメディアや人々に注目されることがあるなんて、信じられない。
でも、現実にそうなんだから、ある意味恐ろしい。時代は変わったな。
会場は淀屋橋の朝日生命ホール。同じするならもっと大きい会場を用意すればいいのに! 会場には座りきれない人もいて、最後部には立ち見の列が幾重にも出来ていた(いや、恐ろしい!)。そして、いつもの試写会とは人種が違う。空気も違う。それに、男性はほんの数人だけ。
この中にチョンドヨンのことを知っている人が、果たして何人いるんだろう? ふとそんなことを考えてしまった(いやいや、意外と皆さんKNTVとかも熱心にご覧になっていて、チョンドヨンクラスならご存知なのかもしれへんなぁ...)。

原作はラクロの「危険な関係」。
今を去る●年前、宮本輝の「錦繍」を読み、その後書きにこんな本がありますと紹介されていたのが「危険な関係」。
どうしても読んでみたくなった。その当時、岩波文庫から出ていたけれど既に絶版。方々探した結果、図書館で世界文学全集か何かに収録されているものを読んだ(重たかった!)。その後、神保町の山陽堂(岩波関係専門の古書屋さん)にリクエストを出していて、結構なお値段で入手した。その後、何度目かの復刻本フェアで復刻されてしまい、それも購入した。もうその本を紐解くことはなかったけどね。そのまま今も手元にあればいいんだけど、あの地震で、残念ながら夜露と共に消えていきました。
面白いんだけど、もう片方の主人公の女性(セシル・ヴォランジュ)が、どんどんヴァルモン子爵の罠に嵌まっていくのが、辛くて、切なくて...。「駄目、ダメ」って心の中で叫んでしまう。それでも、ページを繰る手が止まらない。そんなお話しでしたね。
今回、この映画を観て、「危険な関係」をもう一度読んでもいいかな、そんな気がしました。初めて読んでから随分時が流れている。また違った感想を持つに違いない。今でもきっと、書店さんの岩波文庫の棚に差されているはずだ(数年前に映画化されたしね ※なんと角川文庫から40年ぶりに復刻改訂版が出ていて、「スキャンダル」の原作として積まれていた! 何ちゅう逞しい商魂や!)。

さて、映画のご紹介。
ストーリーは原典の「危険な関係」をなぞっているわけではない。そのエッセンスを下敷きにしているだけで、舞台は18世紀末、李王朝時代の末期、その上流社会に置き換えられている。手紙も重要な役割を担ってはいるけど、決して全面に出ているわけではない。まぁ、そんなことはどうでもいいか。
ペヨンジュン、イミスク、そしてチョンドヨンとはなかなか豪華な顔ぶれ。しかし、当然とは言え、三名とも時代劇の衣装にかつらなのは、ちびっと惜しい。特にイミスクは最後の最後までまるで別人のようだった。昔の人はあんなに髪を伸ばしてたんでしょうかね。衣装も凄いよ!
衣装だけではなく、凄い予算を投入したと聞いている箪笥などの小道具、大道具にも目を見張る。確かに螺鈿細工の家具がお好きなようですね。

婚約していただけで、結婚する前に旦那と死別してしまい、その後9年間も貞節を守り地味に暮らしていたチョン夫人(チョンドヨン)。
そして彼女の実家の隣にある邸宅に住む高官のチョ夫人(イミスク)。さらに彼女の従兄弟で稀代のプレイボーイ、チョウォン(ペヨンジュン)。
この三人が織り成す、怪しげでいながら、奥深い「愛」の深淵を魅せてくれる。

ボクは残念なことに「冬のソナタ」は拝見していない。一回目はちゃんとビデオに撮ったけれど、15分ほど再生しただけで、挫折してしまった。それはペヨンジュン、チェジウの高校生姿が見ていられなかったのと、吹き替えの声に覚える違和感に耐えられなかったから(字幕だったら良かったのに!)。
だから、この「スキャンダル」でヨン様がどれだけイメージチェンジしていたのかはわからない。でも、確かにハンサムだし、瞳で演技が出来る俳優さんですね。

チョンドヨンは、まぁ、良くも悪くもいつものチョンドヨン。
この人、ほんとに役になりきってしまう。この映画ではチョンドヨンではなく、チョン夫人だし、おかっぱ頭で担任の先生に憧れる小学生(「我が心のオルガン」)、チャットで知り合った男性に待ちぼうけを食らわされてしまうOL(「接続」)、ATMの監視カメラに話し掛ける塾の講師(「僕にも妻がいたらいいのに」)と、ほんといろんな女性に姿を代えてスクリーンに現れる。次の新作では海女さんらしいね。
しかし、ちょっと旬は過ぎてしまったのだろうか? 役柄のせいもあると思うけれど、何か元気がないように思えた。

イミスクは「情事」のとんでもない演技で、ボクを悩殺してくれた。頭の中では「この人はイミスクだ」とわかってはいるんだけど、ラストで髪を下ろすまで、まるで別人に見えた。そうか、この人は、こんないじめっ子役も存外似合ってしまうのか!

正直言って超話題先行型の典型的な例で、映画そのものはどうってことない(ここまで断言してしまって大丈夫なのか、って気もするけど)。大ヒットは間違いなしやとは思うけど...。
ヨン様が主演していなければ、日本での公開はもっとひっそりと、レイト上映がせいぜいだったかもしれへんなぁ。
興味がおありでしたらどうぞ。もうちょっと待ってテレビかDVDでも充分だとは思いますけどね。

そうそう、16才のすぐ寝そべる側室ソオクを熱演したイソヨンが公開に併せてプロモーションで来日。写真を拝見する限り、現代風の髪型に服装だとかなりかわいいです(映画中では、単なるバカ娘にしか見えなかったけどね)。今後、彼女は要・注目なのかもしれません。

おしまい。