モロ・ノ・ブラジル

ブラジルを感じる


  

5月だと言うのに梅雨空かと思っていたら、今度は大型台風のお出まし。幸い、台風の関西直撃は免れたようだけど、台風から供給される雨雲が前線を刺激して、雨がじゃんじゃん降っている。本当に鬱陶しいし、気温が上がらず肌寒い。この天気どうにかならんかな。

テアトル梅田で上映されていたときに、うっかり観逃した「モロ・ノ・ブラジル」がシネカノン神戸でモーニングで上映される。もう縁がなかったのかとあきらめかけていただけに、素直に嬉しい。
今月一杯で三宮アサヒシネマ、西灘劇場が閉館してしまう。これから神戸地区はシネ・リーブル三宮とここシネカノン神戸に期待することになりそうです。

意外とお客さんが入っている。この映画はそんなに人気があったのかな?
ストーリーなどまるでないドキュメンタリー。
しかし、この作品は全くのドキュメンタリーではなく、造り手の意志が凄く反映されている。ドラマやストーリーはないけれど、画面に映し出される人々は、監督の意図を汲んだ(あるいは、用意された?)言葉をカメラの前で話している(と思う)。

30年も前、ミカ・カウリスマキは友人にレッド・ツェッペリンのLPとブラジル音楽が録音されたLPとを交換する。それ以来、彼はブラジル・サウンドの虜になっていた。
そして、こんなとんでもない映画を撮ってしまった。

心から揺さぶられる。

音楽を記録する媒体として、映画は最適かもしれない。
大きい画面、大音量。
最も、個人的に楽しむにはフィルムでの上映はちょっとつらい。どうしても、DVDやビデオになってしまうけどね。

正直言って、音楽には造詣が深くなく(それどころか「何にも知らない」)、ブラジルと言えばサンバでしょ、そんな軽薄な連想しか出来ない。
この映画も、何も体系的にブラジルの音楽を編纂しているわけではない。それでも、多民族国家であるブラジル。そこで奏でられる音楽をざっと一通り紹介してくれる形式にはなっている。それも、教科書的ではなく、ミカ・カウリスマキ監督自らがその現場へ出かける。壮大なブラジル音楽を訪ねるロードムーヴィーなのだ。

映画の中で紹介された全てを覚えているわけではない。
インディオが自分の部族に伝わる言語を用いて、祝祭の音楽を奏でる。また、ある街では、自らが考案した様々な音を出す打楽器を作り、売っている。アフリカから連れてこられた奴隷が、故郷を思い細々と伝えてきたアフリカ音楽。それらが時間をかけて融合したのが、ブラジルの音楽であり、サンバである(らしい)。

どうやら、サンバにも古典的なサンバと、白人の音楽に色濃く影響を受けた新しいサンバがあるようだ。そしてどうやら、現在は古典的なサンバが見直されている(ようだ)。

結論を言えば、この映画は所詮言葉を用いて説明することなど出来ない。
リズムがあり、踊りがあり、そして曲があり、歌がある。それら全てがこの映画。
もう、観て、感じてもらうしかない。

日本人のボクが感じてる「音楽」と、リオの皆が持っている「音楽」はまるで違う。ひょっとしたら、リオの人たちにとっては生活そのものが「音楽」なのかもしれない。
シャツを仕立てる職人のおっちゃん。単なる気のいいオヤジなのかと思ったら、彼はCDもリリースしている歌手で、夜になればクラブで、大御所としてステージを勤める。それもごく自然に。なんか、びっくりするな。彼の自然さに、そして周囲の受け止め方に。

フーム。
一度、ブラジルに行ってみてもいいかなぁ。

きっと、どこかで再映されることがあると思います。その時には是非。ブラジルを感じてください。

おしまい。