THREE/スリー/臨死

一本で三粒美味しい?


  

先日の夕刊に、睡眠時間を7時間とる人が一番長生き出来るという記事が載っていた。7時間よりも短くても長くても、死亡率が上がっている。ボクは単純に、睡眠時間が長ければ長いほど健康で長寿になれるのだと思い込んでいたのだけれどな。睡眠時間が長い人は、自覚症状がないだけで、何らかの疾病を抱えていて、その影響で身体が長い睡眠を要求しているそうだ。
そうか、ボクも実は身体に難病を抱えていたのか...。そうだ、そうに違いない!

Bunkamuraとは通りを挟んで向かい側にあるビルの4階にあるのがシネ・アミューズ。
正直言って、ここのスクリーンはお世辞にも“観やすい”とは言えない。客席の段差があんまりなく、前の席に人が座るとそれだけで画面の1/3から1/4は観えなくなる。また、天井も低くて妙な圧迫感がある。ちょっと厳しい環境だと思う。なんとかなりませんかね。
今回もお客さんが、パラパラ状態だから良かった。そう言えば、前回ここで観たときもパラって感じだった。これが、半分以上座席が埋まっていると、映画を観に来たのか、他人の後頭部を見に来たのかわからなくなるんとちゃうかな?

今回は、タイ・韓国・香港で個別に制作された短編(?、中編?)三作のオムニバス。テーマが「死」という関連はあるけれど、それぞれが独立した作品を続けて上映する趣向。どの作品もいい加減に撮られているわけではなく、しっかりした脚本とかなりの予算で制作されている。
ほんとどれもなかなか豪華な作品揃いで、特に香港のピーター・チャン監督の作品にはレオン・ライとエリック・ツァンというトップスターが出演しているから、ちょっと驚いた! それでは、上映順に紹介します。

「memorises」(韓国)
新興住宅地、ニュータウンが舞台。この街に引っ越してきた若い夫婦、幼い娘が一人。ところが、何の前触れも無く奥さんが姿を消してしまう。家出、蒸発、それとも何か事件に巻き込まれたのか? しかも子供を置いたまま。旦那は困り果てる。取り敢えず娘は妹夫婦に預かってもらう。 彼女の帰りを待って、居間のソファでうとうとしていると不思議なことが起こりはじめる。あっちを向いていた人形が、いきなりこっちを向く。そんなある日、車でマンションに帰ってきた旦那は、地下の駐車場で顔なじみの警備員に話し掛けられ、このマンションは建築中から変なことばかり起こり、きっと呪われているのだと聞かされる...。
別にホーラー映画ではないので、恐いとか恐くないとかは関係ないのだと思うけれど、それにしても締まりが無いように思えた。もうちょっとこの夫婦の背景をしっかり描かないと、何がなんだかよくわからない。
失踪する奥さんにキムヘス。資料を読むまで気がつかなかったなぁ。

「the wheel」(タイ)
冒頭の「つかみ」で、グイっと物語りに引き込まれる。これは上手い!
劇団を主催する二つの一家。双方は血縁関係があるのだろうけれど、人形劇の方は社会的地位も高く裕福、もう片方は地位も低く収入も多くない。
そんなある日、人形劇の方の主(あるじ)が病に倒れてしまう、主は息子と妻を呼び「人形には呪いが掛けられているから、今すぐに川に流して捨ててしまえ」と指示を出すのだが...。だが、捨てる前に三人とも死んでしまう。そして、人形はもう一方の一家の主の手に渡る。主人は人形を手にしてほくそえむ。しかし、次々に得体の知れない不思議なことが身の回りで起こる。これは人形に掛けられた呪いのせいなのか?
人形劇の一家に弟子入りしている青年に「ジャンダラ」に出ていた少年(スゥイニット・パンジャマワット)が出ています。

「going home」(香港)
映画の出来そのものはこの作品が一番だと思う。ただ、上映時間の割には観ていて“中だるみ”を覚えてしまう時間があるのも確か。
あと一カ月後に取り壊されるというアパートに警察官のエリック・ツァンが息子を一人連れて引っ越してくる。ここには管理人ともう一世帯が残っているだけ。ツァンが仕事から帰ってくると、留守番をしているはずの息子がいない。方々を探し、最後に残っていた世帯が住む部屋を訪ねるのだが...。
あまりにも理解の範疇を超えるお話しの展開に、思わず画面に観入ってしまう。しかも、レオン・ライ。それでも、さすが中国4,000年の歴史、と妙に納得してしまう(かな?)。ある意味、とっても哀しい。哀しすぎるストーリーだし、結末も...。
レオン・ライの恋女房を演じるユージニア・ユアンは初めて拝見する女優さんだったけど、今後に期待できそうです。

上映時間は三本合わせて2時間10分。これなら一本一本に倍の時間を与えて、独立した作品としてリメイクして欲しい。短編とはとても思えない、まとまりの悪さ。短編映画なら、それなりに端折るところは端折って、もう少し歯切れのよいテンポで展開して欲しかった。単に上映時間が短いから「短編」ではなかろうに。
いずれも、テーマそのものが興味深いだけに惜しかったな。

今回は文句ばかり言っているけど、最後にもう一つ。「予告編が長すぎます!」。

大阪では、近日中に動物園前シネフェスタ4で公開されるようです。
いろいろ書いてしまいましたが、決してツマラナイ作品ではありませんので、興味があればどうぞ。「一本で、そこそこ美味しい三粒」って感じかな。

おしまい。