「carmen. カルメン」

美しい黒い瞳の誘惑


  

とうとうゴールデンウィークは終わってしまった。
来るまでは、あんなに指折って楽しみにしていたのに、ほんと過ぎていくのはあっと言う間だ。淋しい。それに後半は天気が崩れたのに、終わった途端に、抜けるような乾いた青空が広がる。あぁこんな日にこそ、爽やかな風に吹かれて、山を歩きたかったのになぁ...。

さて、雨が降った日に観た二本目。テアトルからダッシュで新梅田シティの梅田ガーデンシネマへ向かう。
「カルメン」って聞くとオペラのカルメンを連想するのが普通の反応かもしれない。このカルメン、実は当時話題をさらった新聞記事をベースにフランス人作家プロスペル・メリメが1847年に書いた小説だったとは(岩波文庫から出ているようなので、一度読んでみよう)! 知らなかった!
先日拝見した「永遠のマリア・カラス」でも、このカルメンのシーンが数多く挿入されていたしなぁ。てっきり原典は戯曲だと思っていた。

セビリアの女にはなくてはならない三つの黒があるそうだ。それは「髪、眉、瞳」。ピンクもしかり「唇、指先、そして乳首」。そんないい女ばっかりいるんだろうか、スペインのセビリヤには...。行ってみたい...。

兵士・ホセ(レオナルド・スバラグリア)、タバコ工場に衛兵として詰めている。誰もが憧れるカルメン(パス・ヴェガ)から、誘いを受け赤いバラを投げつけられる。「私のほくろを見てみない?」

この言葉で、カーっと頭に血が上る。
このカルメンはもちろん、ホセもむちゃくちゃかっこええ。あぁ、天は選ばれし者に、さまざまなものを与えるのだなぁ。

純真で真面目な兵士ホセは、一気にカルメンに傾注していく。兵士としてのこれまでの実績も、誇りも投げ捨てる。そして、カルメンは徐々に純な乙女ではなく、悪女としての姿をボクたちの前に表しだす。
しかし、もうホセには後ろを振り向いたり、引き返したりすることは出来ない。カルメンのために(いや、自分のために?)、どんどん落ちて行く。
ウ〜ン。これって、ロマンなのか?
考えてみたら、一人の女性に一途に入れ込んで、突っ走ることができるなんて、ある意味羨ましい。そんな相手にめぐり合えることこそ、滅多に無い。燃え上がり、その思いが故に全てを投げ捨て、やせ細る。そんな恋をしてみたい。

細々とストーリーを説明出来ない。
どっちにしても、上手くいくわけがないこの二人の愛の行方はいかに。と言うか、この恋の行方はもうわかっている。それでも観ずにいられない。そんな不思議な作品。
ぐいぐい引っ張られる。映画を観ながら「もしボクがホセだったら...」なんて有り得ないこと空想してしまう。

まぁ、しかしこうも思ってしまう「もうちょっと大人になれよな、ホセ」。

結局、ホセは山賊に身をやつし、そして捕らえられてしまう。
そのホセに、後悔や懺悔の念はなく、爽やかさ(とまではいかないけど)や安堵感があったのもなんとなく頷けるなぁ。

“第二のペネロペ・クルス”との呼び声が高いパス・ヴェガは、黒い瞳を持ち、不思議な雰囲気を漂わせる美女。スペイン(セビリア?)は美しいお方の宝庫だねぇ。そしてホセを演じるレオナルド・スバラグリアもなかなかの美男子。こんな人が軍服に身を包むと映える。
ストーリーもさることながら、この二人を観るのもいいんとちゃうかな?
もう暫くは上映しているはずです。

おしまい。