「ぼくは怖くない」

少年からの出口、大人への入口


  

毎週水曜日はレディースデイ(大阪、神戸は火曜)。多くの映画館で女性は1,000円で映画を観ることが出来る。これは割とよく知られているけれど、男性のボクの場合はどうか。メンズディはないのか?
それがちゃんとあるんです。十三の第七藝術劇場は月曜・1,000円、動物園前シネフェスタは月曜・1,200円、テアトル梅田は火曜・1,000円。もっと他の劇場にも広がってくれないかな。

で、この日は火曜日。テアトル梅田でダブルヘッダー。平日にレイトまで観るのは、ほんと久しぶり。
まずイタリアの作品「ボクは怖くない」。

圧倒的な色彩の迫力にボクは言葉を失う。

画面一杯に広がる黄金色をした麦畑。それは丘陵を覆ってどこまでも、どこまでも無限大に広がっているようだ。畑という概念ではなく、ただただ草原がある。まるで、ボク自身も映画館のシートに座っているのではなく、麦畑の中で子供たちといっしょに転がり回っているような気がした。ボクの周りには、枯れた葉の匂いが漂っているような...。この麦が刈り取られて、パスタやマカロニ、ピザの生地なんかに化けるのか。

色が違う。
しっとりとした湿り気は一切、ない。すっぱり、ない。
どこかざらついて、埃っぽい。からからに乾いて乾燥しきった色彩。まるで、一昔前の外国の雑誌を見ているような、そんな色。ふと「しずる感」という言葉を思い出した。この映画の色には「しずる感」がないのだ。そんな、うすーくセピア調の色彩。特に陽の光が当たっているシーンは顕著。この色の感覚は凄いな。

イタリアの南部。麦畑の他は何もない。そんな丘陵地帯でお話しは展開される。
このあたりに住む悪ガキどもはいつもつるんで遊んでいる、学校へは行かないの? そんな中、ミケーレはいつも妹を連れて遊んでいる。妹は邪魔なはずなのに、そんなことは一言も口にしない優しいお兄ちゃん。
ある日、丘の中腹にある廃墟へみんなで遊びに行く。そこで妹の眼鏡を落としてしまい、一人で探しに行ったミケーレが眼鏡と一緒に見つけたのは...。
藁で覆われてトタンで隠してある穴とその中にいる少年だった。

この、少年が暗闇から陽の当たる場所へにゅっと出てきたときには、座席から飛び上がらんばかりにびっくりした! 「ひやぁ〜(出た〜!)」って声も出していたかもしれない(恥ずかしい!)。この映画って幽霊が出てくるホラー系の映画やったんか!(違います)

ちょっと違った角度から“少年の出口・大人への入口”を見せてくれる。
今まで無邪気に麦畑で遊ぶだけだったミケーレが、フィリッポ(穴にいた少年)と出逢うことで、見えていなかった大人の世界が少しだけわかってくる。
そして、この夏が終われば、良くも悪くも大人への入口に入って行くんだなぁ。大型のコンバインで有無を言わさず刈り取られていく麦のように、ミケーレも大人になっていく。もう畑で遊ぶこともなくなってしまう。

大人たちがしていることが、いいことなのか悪いことなのか、それはミケーレにはわからない。いや、わからないのではなく、大好きなパパが悪いことをするなんて思っていない。悪いのはブラジルから来たへんなおっさんに違いない。でも、フィリッポは助けなくっちゃ。フィリッポにはボクだけしかいないんだから。

突然、銃が発射される。終盤のここでも、この突然の出来事に、今度はお尻が半分だけ飛び上がった!

優しい気持ちや、甘酸っぱい気持ちにはならないと思う。だけど、何故か懐かしさを覚えてしまう。そんな作品だと思います。
圧倒的な色彩の美しさは、是非大きなスクリーンでご覧下さい! 少なくとも4/30まではテアトル梅田で上映しているようです(時間は各自でチェックしてください)。

おしまい。