「木浦は港だ/Mokpo the Harbor」

彼には渋い男の方が似合う...


  

最近、韓国の映画に出てくる主人公のライバルは“映画好き”が多い。この「木浦は港だ/Mokpo the Harbor」に出てくるヤクザの親分ソンギ(チャインピョ)も、とても映画が好きなようだ。自分のために野外に上映施設を持っているほどだもの。
で、最大の見せ場は、「猟奇的な彼女」のキョヌを自分が演じ、その回想シーンが挿入されることだろう。キョヌは自分で、チョンジヒョンの役をソンソンミ。キャンパスでチャテヒョンが彼女のハイヒールを履いて走りまわらさせるシーンだ。ボケッっと観ていたボクは、最初はこのシーンがパロディだと気が付かなかったほど。思わず爆笑してしまう。

こんな話しを冒頭にしてしまうほど、この映画は他にはあんまり取り立てる部分がなかったような気がする。決して面白くない駄目な映画ではないけれど、なんかヒネリが足りない、ちょっと浅いような気がする。
本来、この映画の目玉は、「悪い男」などのチョジェヒョンがコメディに挑戦することだったのではないか。ちょっと抜けたところがある刑事を演じている。でも、彼がコメディでボケ役をするのは構わないけれど、それが成功しているとは思えない。新しい側面を披露しているとも思えない。この役はチョジェヒョンでなくてもよかった、他の役者さんでも十分だった。
ストーリーそのものも物足りない内容だった。刑事モノとやくざモノを足して割ったような構成で、どのエピソードも充分予想出来る範囲を超えていない。お決まりの下品なシモねたも入ってるしね。

ソウルで駄目な刑事をしているチョジェヒョン。どうもうだつが上がらない。
そんな彼に、木浦(モッポ、韓国の西南の角あたりにある港町)で行われている麻薬密輸事件の内偵捜査への出動命令が下る。ところが、潜入捜査はそうそう上手く行かない。組織に潜り込もうと奮闘するが、中枢には近づけない。末端のジャージ三人組に弟子入りする格好で末席を汚しているのが精一杯。
ようやくチャンスを掴んだのが、ボクシング大会。倒れたら殺すという命令に怯えながら、なんと逆点KO勝ち。これで一躍ボスの片腕に上り詰めた。ようやく捜査は軌道に乗り始めたかに見えたが...。
なんと、彼は自分が刑事なのか、それとも組織の一員なのか、混乱してよくわからなくなってきてしまったのだ。う〜む、これっていったい...。

チョジェヒョンを指揮する検察官役にソンソンミ。彼女もしれっと潜伏捜査に乗り出し、ソンギから猛烈にアタックされるのは面白かったけどな。この人もいつまでたっても演技が固いな。彼女こそ「壊れた」役どころにチャレンジすべきかもしれない。

悪い作品ではないと思うけれど、ボクにはもうひとつでした。日本での上映はどうでしょう、と思っていたら、今年の夕張で早々と上映されていたとは知りませんでした(しかも、グランプリを獲得していたとは!)。
チョジェヒョンにはこんな三枚目よりも、抑制が効いたストイックな男臭い役が似合うような気がします。

おしまい。