「花とアリス」

青春のスケッチ


  

なんとも不思議な感覚の映画だった。
なんか、青春のスケッチを思わせる。

もうすっかりおっさんになったボクから見れば、別に大した事件や出来事が起こるわけではない。でも、16歳の当事者にとっては、どんな出来事でも天地を揺るがすほどの大事件なんだなぁ。
授業の風景や、勉強するシーンなんてまるでない。それでいい。思いでの中の理想的な高校生活。

真っ白に霜が降りた河原を口も利かずにずんずん歩いていくオープニングがとっても印象的。
はなとアリスは仲の良い友達。
電車通学の途中で気に入った男の子を見つける。その男の子はこの春から入学する高校の先輩だ。はなは先輩が所属する落研に押し掛け入部する。まるでストーカー。
学校からの帰り道、ぼんやりしたこの先輩・まーくんが頭を強打し倒れてしまうのを目撃したはなは、先輩に暗示を掛けるのだが...。

本筋を離れたサイドのエピソードが面白い。
まるで生活感がないはなの家とアリスの家。そしてまーくんの禅寺での修行も謎だ。アリスの両親も出色の出来だし、いきなり中国語が出てくるのがおかしい。アリスのキットカットをさも「美味しそうに」食べる顔も気に入りました。
いろんな役者さんがちょい役で顔を出しているのも面白い。
雨に打たれながら公園で黒装束の人が踊っている。その姿がなんかドキッとしたな。
浜辺で見つけたもう一枚のハートのエースの意味は?

リアリティがない分、ほんとうに夢のような映像。こんなことあるわけないやん、と思いながらも、映画だから許してしまう。
そうそう、これはスケッチなんだから、別に意味がなくてもいい。日々の生活から切り取ったスケッチなんだから。
ただ、スケッチであるがゆえにドラマは薄い、それは仕方ないか。
それにこのお話しは、妙な乙女チックなところがあり、それはどうも「こうだったらいいのにな」って男の勝手な想像の産物のような気がする(それが狙いなのかもしれないけれど)。

まぁ、しかし、あんなにぼーっとした宮本先輩のどこがいいのかね(まぁ、もう一人の落研の先輩よりはましか)。それがわからん。

おしまい。