「月曜日に乾杯!」 |
そのままふらっと出かけてしまいたい |
クラシカルな匂いがする映画館はどんどん姿を消している。ボクが学生時代にあり、なおかつ現在も存在している映画館はもう数えるほどしかない(震災の影響を差し引いたとしてもね)。その数少ない存在例の一つが今回お邪魔した西灘劇場。もう歴史的建造物に指定してもいいかもしれない。そんな趣がある(決して悪い意味ではなく、郷愁がこんな発言をさせる...)。
毎日、判で押したような生活をしているお父さんが主人公。決まった時間に家をクルマで出発して、汽車とバスを乗り継いで勤務先の工場に出勤する。仕事を終えて帰ってきてからが自分の時間なんだけど、食事も楽しそうじゃないし、家族からそう愛されているようには見えない。 ふとしたきっかけで知り合ったこの街に住む男と誘われるままヴェネチアでの一日を過ごす。父の友人にも会った(このおっさんは傑作だ!)。 その間、失踪したお父さんを血相を変えて捜すわけでもなく(まぁ、少しは努力していたようだけどね)、何か達観した気持ちで悠然と生活を続けるこの一家も凄い。 楽しい一日の終わりかけに、男とともに突然屋根に上る。観光客が見ない本当のヴェネチアがここから見える、と言うのだ。広がる海と、一面に明るい黄土色の屋根瓦の建物、寺院の鐘楼などの美しいシルエット。住む人が変わっても、何百年も変わらない街の姿。マルコ・ポーロもこの街並みの中で育ったのだという。う〜ん、そうだったのか。
一体どれくらいの日が過ぎたのか、お父さんはようやく家に戻る。何事もなかったような顔をして、内心はびびっていたようだけどね。そして、家族も普通に受けいれる「お帰りなさい」って。
これって、いいオヤジにも「プチ家出」は必要だってことなのか。 何も起こらなかったけれど、同じコンパートメントに乗り合わせた謎の美女。ほんとうに謎のままで終わってしまったのは、ちょっと残念でした。 おしまい。 |