「シービスケット」

これもアメリカンドリーム


  

去年の秋辺りから競馬メディアで取り上げられ始め、ボク自身もすぐに原作を読み、公開を楽しみにしていた「シービスケット」。
メジャーな映画館では公開が終わるというこの日にようやく拝見してきました。
しかも、劇場は大阪市内でも南にある阿倍野はアポロシネマ8。ここに来るのは当然初めて。このアポロシネマ8はシネコンになっていて、平日のこの日はチケットブースやロビーもがら空きでしたが、劇場内は意外と人が多くて100ほどの座席数に対して50名は入っていたでしょうか(それにしても、平均年齢は異様に高かったけどね)。どっからこんなに多くの人が湧いてきたんや?

さて、この「シービスケット」、映画としてどうなんだろう?
ボクが競馬にどっぷり漬かっていることと原作を読んでいることを差し引いても「よくわからない」と言うのが正直な感想。
それは、この映画ではシービスケットという馬が主人公ではなく、この馬を取り巻く人間にスポットが当てられているからではないでしょうか。
馬主、調教師、そしてジョッキー。この三人が織り成す人間模様の中心にシービスケットはいるのだけれど、残念ながら彼には台詞がないからなぁ...。

一介の下級条件馬に過ぎなかったシービスケットが、どうして西海岸のみならず米国中を熱狂させる存在になったのか? そのエピソードの描かれ方が少し弱かったように思う。
何連勝かしただけで、どんな馬でも国民的ヒーローになれるのか? そうじゃないでしょ。そのあたりの説明がちょっと下手だなぁ。
そして、サンタアニタハンデに勝つことが、馬にとって、馬主・調教師・ジョッキーにとってどれほど重要で名誉なことなのか、それもいまいち伝わってこなかった(説明が不足していた)。
映画のままだと、クライマックスのレースは、シービスケットとポラードの単なる復帰戦であったというような描かれ方、これは少し淋しい。

馬には格があり、当然レースにも格がある。
ウォーアドミラルとのマッチレースに勝ったシービスケットには、もう格の低い競走には出られないことをもう少し説明して欲しかったな。

まぁ、そんな難しいこと(競馬好きの独り言?)はどうでもいい。
傷つき、諦めかけていた人々がシービスケットと出会うことによって、勇気を貰い生きていく意味を見出す。そして、とうとう栄光を掴む。シービスケット自身もそうだ。
怪我で一旦は競走能力喪失の診断を下されてにもかかわらず、蘇る。これって、素晴らしことだし、ある意味アメリカンドリームを体現しているんだなぁ。

残念ながら、名馬=名種牡馬(お父さんになる馬)ではない。著名例では、あれだけの人気と成績を残したオグリキャップでさえ、種牡馬としては成功しなかった(もちろん、名馬かつ名種牡馬という例もあるけどね)。
シービスケットも種牡馬としては大成しなかった。60年後の現在、シービスケットの血を引く馬は日本にはほんの数頭しかいないのはちょっと淋しいね。

ところで、老調教師のトム。どうも大滝修二に見えて仕方なかったのはボクだけでしょうか?

おしまい。