「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」

いつまでも心の片隅に残しておきたい


  

唐突にストーリーが展開される。
当然、最初はよくわからないまま展開していく。そして、やがて物語りの輪郭がハッキリしてくる。この一家はアイルランドから夢の国アメリカ。それもニューヨークへやって来たのだとわかってくる。幸せそうなこの一家にも「暗部」が隠されていることも明らかになってくる。
そして、もう一つ。この姉妹(クリスティとアリエル)。むちゃくちゃかわいいんだ! 特にお姉ちゃんの方ね(実の姉妹だそうです)。

この一家は両親と姉妹の四人家族なんだけど、実は幼い弟がいた。でも、彼はふとした事故のために幼い命を終えていた。その悲しい想い出を拭うためだったのだろうか、四人は故郷を捨てカナダを経由してアメリカへ流れて来たのだ。
ようやく辿り着いた、初めて訪れるニューヨークに四人はただただ驚くばかり。
どうにか、住む場所を見つけるが、それだけで所持金は底を尽き、乗ってきたクルマを手離す。
その住む家は、周囲から「ジャンキーハウス」と呼ばれる麻薬中毒者の巣窟。そのアパートの最上階にどうにか落ち着く。この四人の前にこの部屋に住んでいたのは、鳩。四人がこの部屋に入って最初にした作業は、鳩たちから部屋を取り戻すことだった。

ひとまずこのアパートに落ち着いて、物語りはようやく動き始める。
アメリカに移住して必要なのは仕事だ。父親は役者。お決まりのようだけど「売れない役者」。幾つものオーディションを受けるが朗報は届かない。母親は近くのアイスクリーム・パーラーで働き始める。
ニューヨークでの暮らしがとっても丁寧に描かれる。そして当然のようにさまざまな事件が起こる。

今ニューヨークにいるこの四人家族のこと、この四人家族の心を覆っている死んでしまった末の弟のこと、そして同じアパートに住むちょと謎めいたアフリカ系アメリカ人の芸術家との交流。
最後に新しい家族の誕生へと物語りは語り継がれる。

何も凄いことが起きるわけではない。
だけど、人間って、「生きているって素晴らしいことなんだ」って教えてくれる。いつまでも心の片隅に残しておきたい。そんな丁寧な映画です。

まずまずのオススメ。2月13日までOS劇場C・A・Pで上映中。ボクが行ったのは土曜日だったのですが、半分ほど席が埋まっていたのには驚きました。

おしまい。