「ジョゼと虎と魚たち」

もう一つわからないのに、何故か心に残る


  

お正月はあんなに暖かかったのに、このところの寒さはなんなんでしょう。
まさに「春節寒波」。旧暦のお正月にあわせたように急に寒くなった!
ボクが住んでいる西宮の最低気温が氷点下になるのはそんなに多くない。一冬に数日もあれば多いほうだ。それが、春節休み間の朝は街中が凍り付いていた。寒い。寒い。寒かった!

そんな寒波が来る前、まだ暖かかった頃の土曜日。梅田ガーデンで拝見したのは、話題の「ジョゼと虎と魚たち」。この日の朝一番の回(と言っても12:00から)。立見こそ出ていないようやけど、ほぼ満席。ボクが入場した時には、ほとんど席は埋まっていたのに、なんと最前列の真中に座ることが出来た、ラッキー!

甘くて、切ない。

青春の匂いが漂う。
その割には、なんかもう一つよくわからへん。

どうして、恒夫はジョゼと別れてしまったんやろ?
いや、その前に妻夫木くんはどうしてジョゼに心惹かれたのか?
でも「画面から“なんで?”って尋くな」と言っているような気がした。

かと言って「難しい」ストーリーではない。ごく単純な作品。
若い大学生の恒夫(妻夫木聡)が、偶然若い女の子・ジョゼ(池脇千鶴)に出会い、そして恋に落ちる。ただ、それだけのストーリー。男はごく普通の健常者(けんじょうしゃ)だけど、女は障害者であることが特別なのか。彼女は下半身が不自由で、歩くことも立つことも出来ない。いつもは、祖母に大型の乳母車に載せられて街を散歩している。
乳母車に乗っているジョゼに恒夫は偶然出会う。

「帰れと言われて、そのまま帰るような奴は、帰れ!」というのは『名言』かもしれない。

舞台は京阪沿線であることがわかる(駅の改札が出てくるからね)。普段は標準語を話す恒夫が、実は九州出身なのもだんだんわかってくる。池脇千鶴の大阪弁は当然、違和感がまるでないナチュラルな大阪弁。
でも、なんかなぁ。スクリーンから大阪の匂いがちっとも香って来ない。大阪で生きていて、生活している分には何も感じないけれど、一旦カメラで撮られ、スクリーンやブラウン管に映し出される瞬間から感じる大阪独特のベタッとしたものが全然無い。妙にスマートで生活感が希薄。
ひょっとしたら、ロケのほとんどは東京やったんとちゃうかなぁ。そんな気がする。

いろんなちょっとした伏線が数多く張られているんだけど、一番面白かったのは、ジョゼが愛読しているSM雑誌や教科書の持ち主のエピソードだろう。これは本当に傑作。腹を抱えました。

それにしても、どうして妻夫木くんはジョゼと別れてしまったのか、いや、別れようと思ったのか。
どうして、上野千鶴と歩き始めてから号泣してしまうのか。
若ければ、そんな説明は無くても理解できたのかもしれない。でも、もう若くないボクにはどうも理解出来ないなぁ。
ジョゼにどんどん惹かれていく姿は共感できたのに、ラストが理解出来なかったのは、なんだか「切ない」。

お話しが面白いからなのか、それとも妻夫木くんのお陰なのか、良くわからないけれど、そこそこの人気。まだご覧になっていない方にはおすすめ出来る作品だと思います(まだやっているのかな?)。

おしまい。