「チルソクの夏」

5番ゲートで待っている


  

遊びに、仕事に(?)、忙しく過ごすうちに秋は過ぎ去ろうとしている。10、11月はほんとにあっと言う間に過ぎて行った。10月の最後の週に映画を観て以来、映画館の暗闇からも遠ざかっていた。いかんなぁ。

で、今回は福岡の「親富孝通り」にあるシネテリエ天神で観た「チルソクの夏」をご紹介します。ご紹介が遅くなったものの、この映画は大阪ではまだ公開日すら決まっていないようです(東京では来春公開予定)。
この映画、ひと言で表現すると、下関の女子高生と釜山の男子高校生が陸上競技大会を通じて知り合い、淡い恋を育む青春もの。
時代は1977〜78年だから、今から25年ほど前のお話しなんですね。物語が進むにつれ、主人公たちとボクは同い年であることが明らかになっていき、ボクは心情的にこの映画にどんどんのめり込んで行ってしまった。う〜ん、懐かしい! 彼女や彼らの姿にいつの間にか過ぎ去った自分の青春時代の姿を重ねてしまっていた。

別に、誰と言って知っている俳優さんが出ているわけでもない。主人公の女子高生だって、騒がれるほどかわいいわけでもない。それでも、純真なストーリーにボクは画面に見入り、そして最後は胸を熱くしてしまった。こんな青春の一ページを切り取ったようなストーリーにボクは弱いのだ。

下関にある長府高校(県立の女子高)の陸上部にいる仲良し四人組。選ばれて韓国・釜山の高校生との対抗陸上競技大会に参加するため釜山を訪れていた。 大会での記録や得点はそっちのけで、彼女たちの関心はかっこいい男の子を見つけること。同じ下関チームの上級生に憧れたり、釜山チームのハードル選手に気が合ったり、大忙し。
大会の前の晩。懇親会が開かれる。四人は韓国の選手アン君を見初めるのだが...。
大会の日、走り高跳びに出場する郁子(水谷妃里)は、フィールドでアン君からアドバイスを受け、大会記録を更新する。その晩、アン君は郁子を訪ねて日本チームの宿舎にやって来た。その晩は別に何が起こったわけではないのだけど、静かに燃える郁子とアン君。
翌日、郁子は関釜フェリーに乗り下関に帰る。そこでは普段の生活が待っていたのだが...。

しかし、何やねぇ。
ボクが過ごした青春時代が鮮明に脳裏に蘇る。郁子を中心とする四人組みとは随分違う青春やったけど...。
この映画の上手いところは、ラストが鮮やかで、しかも美しく撮っていることだと思う。そう、何度も書いているけど、「青春時代は振り返ってこそ美しい」。その余韻の中で終わる姿こそ美しいのだ。
この映画のストーリーについて語っても仕方ないでしょう。ボクの頬はちびっと濡れてしまったけどね。
特に30代後半から40代前半にかけての方には、見どころが多い作品ではないでしょうか。「なごり雪」という唄はいかに多くの人の心にひっかかった曲であったのか。ボク自身、その時代や思い出を共有でき、ある意味「幸せ」です。
なかなかのオススメ! もし、ご覧になるチャンスに恵まれたら是非ご覧ください。

郁子の親友真理役の上野樹里はなかなかイイですね。彼女は今後、大いに期待できると思います。
ちなみにチルソクとはハングルで「七夕」という意味なんですね。

今年の夏前から、山口県・福岡県を中心に先行公開が始まっていて、この日は福岡の先行公開リバイバル上映の初日でした。
シネテリエ天神は、親富孝通りにあるビルの地下にあるこじんまりとした劇場で、文字通りのミニシアター。今となってはクラシカルな造りですね。場内を見回すと映写室が無いのが気になりました。どんな仕組みで上映しているのかな? プロジェクター上映ではなく、ちゃんとフィルムを廻しているようだったけど...。
お客さんは30名ほどだったから、座席数に対して半分ほどの入りでしょうか。この日がリバイバルとは言え、一応初日、しかも初回とだからか、三笠(ドラ焼き?)と映画の缶バッチのお土産付きでした(ありがとうございます)。

おしまい。