「レボリューション6」

あぁ、時間とはなんと残酷なものなのか...。


  

ちょっと甘さも感じながらも、過ぎ去った青春時代への郷愁を感じずにはおれない。ちびっと突飛な感じはするけどなかなか良く出来た青春映画。
うーむ。この映画を観て共感を覚えるのはある程度年を喰って、中年の域に達した人なんだろうな。と言うことは、ボクもそんな域に達したおっさんなんや(あたりまえか)。
青春時代とは、その時は苦くて苦しいものだけど、過ぎ去って思い出の一駒になった時から、楽しく甘美なものとなる。いろんな映画を観ながらこの思いを強くする。思い出になった瞬間からつらく苦しいものはすっかり削ぎ落とされ、記憶に残っているのは都合のいいことばかりになるんだ。

ところがこの映画では「都合の悪い思い出」が15年の歳月を経て蘇ってきてしまう。

15年前のベルリン。
反体制・アナーキストのパンク野郎のグループ「グループ36」は男4人・女2人の小さなグループ。連日街頭デモに出かけて、機動隊と衝突していた。この「グループ36」が他の過激派とちょっと変わっていたのは、デモの度に8ミリ(?)のカメラを廻していたこと。

そして現代のある日、ベルリンにある古いお屋敷が突然爆発する。
捜査の結果わかったのは、15年ほど前の過激派が設置した時限爆弾が時を経て爆発したことがわかる。そして警察の犯人探しがはじまる。
「グループ36」のメンバーたちは、自分たちが作った爆弾がどうして今ごろになって急に作動し爆発したのかいぶかしがりながらも、祝杯をあげる...、どころか今となっては迷惑出来事以外の何物でもなかった。

メンバーだった6人のうち二人は、今も「グループ36」の本拠地だった古びたアパートに居座りアナーキーな日々を過ごしている。ホッテは15年前のデモ中の事故で両足を切断。車椅子に乗りながらの反体制活動。彼を支えているティム(あぁ「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」で主人公の相棒してた兄ちゃんティル・シュヴァイガー)。ホッテの世話をしながらの政治活動(?)。もはや何の意味も見出せないように見えるけど、この二人はまだまだヤル気満々。
一方、マイクは弁護士として活躍し、もう一人のテラーは広告界で大成功を遂げている。女性のうちネレは二児を抱えるシングルマザー、もう片方のフローは社交界を渡り歩く人気者になっていた。
ところが、ひょんなことで、ティム(だったかな?)は警察に捕まり家宅捜索を受けてしまう。そして「グループ36」の全貌を記録した膨大なフィルムが押収されてしまう。このフイルムを見られたら爆弾犯であったことがバレてしまう!
ティムとホッテは昔の仲間を訪ね歩き、フィルム奪回作戦を練り始めるのだが...。

自らの保身のためと言え、再び若き日々のように無茶なことが出来るのか? 
今となっては懐かしいだけだった青春の日々が、いきなり現実のものとなって眼前に突きつけられた。どうすればいいのかわからない。
6人とも大人になっていれば、そう問題もないけど、二人はまだ「青春時代を進行中」だから始末が悪い。
モノクロの青春時代と、時を経た現代の画像とが上手く使われていて、突然昔に引きずり戻された大人たち(残りの4人ね)の気持ちがよく表現されている(共感できる)。
うろたえ、嘆きながらも、今の生活を破壊されては困る。穏便に済ませたいけど、どうやらそうも行かないみたな雲行き。この6人の運命は?

深刻な内容を描いているようで、実は割とからっと軽いタッチで仕上がっている。
時折、にやっと笑わせてくれるエピソードも使われていて、青春を思い出と割り切れるような年頃に達している人には面白い作品だと思う。
もちろん、誰もがこんな濃い青春時代を送ったわけではないけど、ことの大小は別にして良く似た境遇に陥ったことはあるでしょう。昔の友人を取るのか、それとも今の生活を大切にするのか、ってね。あぁ、時間とはなんと残酷なものなのか...。
そんなわけで、今でも「青春時代を進行中」だと思っていたボクだけど、寄る年波は隠せない。にやにやしながら楽しませてもらいました。

劇場は動物園前シネフェスタ4。わずか一週間のみの公開でした。最終日の最終回に滑り込みで拝見しました。お客さんは10名ほどで、いつもどおりですかね。
残念ながら上映は終了しています。ひょっとしたら神戸や京都で再び上映されるかもしれませんが、ちょっと期待薄かな。興味をお持ちなら、おそらく近日中に発売されるであろう、ビデオやDVDでお楽しみください。

おしまい。