「NOVO/ノボ」

それはそれでいいんじゃない


  

ちょっと古い話しだけど、二週続けて週末に台風が接近。お陰で、二週続けて釣が出来なかった。
早起きして、朝の5時に和歌山の加太まで行き、港に着いてから「あかなぁ」とおやじさんに言われるのはツライ。まぁ、ムリして出船して高波に飲まれ、紀淡海峡の藻屑となるよりはましだけどね。
この二つの台風が秋を運んで来た(ような気がする)。今まで、エアコンがんがんかけて寝ていたのに、窓を開けると涼風が入るようになり、今度は羽毛布団をひっぱり出してくるほどだ。これでヘンテコだった今年の夏ともお別れかな。そしたらすぐにコートを羽織る季節になるんやろなぁ。

梅田では上映が終了した「NOVO/ノボ」。神戸では夕方に二回だけ上映している。
簡単に言うと「メメント」みたいな設定。
だけど、設定はよく似ていても、そこから展開されるストーリーはまるで違う。
本当に短時間しか記憶が無い記憶障害。
「メメント」では、主人公が極限にまで「復讐」に執着していたけど、今回はがらっと変わっている。この「ノボ」のテーマは「恋」。
「メメント」のタトゥは、手首に巻きつけたメモ帖なのだ。共通しているのは、自分には記憶が無いと自覚していることだ。

この映画の特徴は、説明が極めて少ない、いやほとんど説明が無いことだろう。特に出ている人々についてはまるで説明が無い。だから観ているこちらは混乱を極める。「この人は何者?」
彼を雇っている女社長はいったい何? カラテ(?)友達で主人公を見守る男はどうなっているの?
極めつけは、この主人公の名前はどっちが正しいの?
それでも、お話しはどんどん進んで行き、ボクもどうにか付いて行かなければならない。

この主人公を演じているグラアム=パブロは、なかなかかっこいい男性。
そして、彼の相手を演じるイレーヌ(アナ・ムグラリス)がいい。時折、ハッとさせるほどの美しさを持っている。うーん、こんな人とお友達になりたいなぁ。
主人公の奥さんもかわいい方です。子供も出色のかわいさですね。
すなわち、この映画にはかっこいい人しか出てこない。それに生活感がむちゃくちゃ希薄。みんなどんなふうにして暮らしているの、生活しているの? まぁ、映画だからいいんだけどね。

結局、主人公は記憶を取り戻すのか?
考えてみたら、そんなことはこの映画ではどうでもいいのだ。特別なシュチュエーションでスマートな男と美女が恋に落ちる。ただ普通の環境で男女が出会い恋をしても映画にならないから、特殊な環境を用意する。それが単に記憶障害だっただけ。
この映画のテーマは「記憶障害者との恋はいつも新鮮」ということなのかな。確かにそれは然りなのかもしれない。
恋愛は心のトキメキ。でも、いつかトキメキは終わり、二度目にはかすかな恐れをおぼえ、次からは怯える。そう、いつも相手の心が離れていってしまうのではないか、別れ話を切り出されるのではないかと考えてしまう。でも、記憶障害者にはそんな心配はない。あるの常に「今」だけなのだから...。
ただ、これもイレーヌの台詞からわかるだけで、ボクにはあんまり実感としては伝わってこなかったけどね。
そう考えると、主人公の記憶障害はちょっと「都合のいい」記憶障害のような気もするけどね。
そもそもシリアスな「メメント」と比較するのは、最初からちょっとムリがあるのかもしれない。

よくわからない映画だったけど、アナ・ムグラリスの美しいヌードも拝めたことだし、それはそれで嬉しかったということでこの作品を評価しましょうか。

おしまい。