「風林高」

肩の力が抜けた楽しいコメディ


  

今回拝見してきたのは「風林火山」。いやいや「風林高」。しかし、このタイトル(邦題)なんとかならんかなぁ。韓国で公開されたときの英字タイトルは「Kick the Moon」。日本では最初「新羅の月夜」という題名で紹介されていたんやけどなぁ...。
この作品、春に劇場公開へ向けて試写会までしたのに劇場公開は中止になり、ビデオ・スルーになった、と聞いていた。ところがこの日いただいたチラシによると、今日の上映以外に、秋に動物園前シネフェスタで上映されるようです(ビデオ・DVDはすでに発売済み)。
心斎橋の東、島之内にひっそりと(?)あるタカラベルモントさんの本社の地下にはホールがあるのは知っていた。ここで開催されたのが「第二回:燃える7時間・日韓映画バトル!」。その出し物としてこの上映が行われた。事前申し込みすれば参加は無料なので、そーさんと出かけました。
200名ほど入れるこのホールは七割ほどは埋まっていたでしょうか。思ったよりも多かったですね。

どんな映画なのかまるで予備知識無しで臨んだこの作品、ありゃコメディだったのね。
主演はチャスンウォンとイソンジェ、キムヘス。なかなか豪華。チャスンウォン、この人ストイックな放火魔ではなく、どこかとぼけた教師の役が似合っている。
残念なのが、子役たちと成人してからの本人が「いっこも似てへん」ことだ。これはちょっと惜しいな。コメディやねんから、子役を使わず本人が学生服を着た高校生を演じた方が良かったんとちゃうかなぁ。

日本の高校生が修学旅行に京都奈良へ行くように、韓国の修学旅行先は古都・慶州(キョンジュ)なのね。今を去る●年前、ソウルから来た学生たちと慶州の高校生が大乱闘を繰り広げる。修学旅行先で他校と喧嘩をするところも似ているねぇ。その大乱闘は、今や「伝説」として慶州の高校生の間で語り継がれていた...。
で、舞台は現代に飛ぶ。
慶州の高校の教師・チャスンウォンは今日もだらしなく教壇に立っている。何を隠そう、彼こそが伝説の大乱闘を引き起こしたソウルの高校の番長だった。
ソウルからヤクザが慶州を乗っ取ろうと派遣されてきた。この派遣隊を指揮するエリートヤクザがイソンジェ。彼こそ伝説の大乱闘の際に一人宿舎に残り騒動に加わらなかったもやし男(?)だったのだ。
イソンジェは地元のヤクザとの交渉の場に偶然乗り込んできたチャスンウォンと十数年ぶりで再会し、旧交を温める。そして、お互いの立場の違いに驚く(そりゃ、そうだ!)。
そこへ、登場するのがチャスンウォンの教え子の美しい姉(キムヘス)。小さなラーミョン専門店(このお店で使われていたラーミョンのお鍋セット欲しいなぁ)を営む彼女に二人は一目惚れしてしまい、慶州の街で再会した二人はライバルになり、奇妙な三角関係を形どる。
この三人の恋の行方を面白おかしく描いたのがこの映画。

ストーリーの割にはチャスンウォンとイソンジェというスターが出て、元ミスコリアのキムヘスもいるから、なかなか豪華なキャスティング。その他にも何度も寝返る地元ヤクザに「ライバン」に出ていた人も顔を出している。チャスンウォンのかつてのライバルだった屋台のオヤジも時折見かける役者さんです。
しかし、イソンジェはなんか完全に型にはまってしまったと言うか、成長が止まったと言うか...。どんな役を与えられても同じやなぁ。演技も想像の範囲内で収まって、なんか意外性を感じない。もう一皮剥けないと忘れられた俳優になってしまうような気がします。大変身を求む。

韓国はこういう軽いコメディ作品を作るのは上手いね。何度も声を出して笑わせてもらいました。
ここ数年、ヤクザもののコメディが受けている韓国映画の中でもかなりのヒット作となったようです。
肩の力が抜けた楽しい作品に仕上がっていますので、お時間があれば是非シネフェスタへ足をお運びください。きっとビデオ・DVDのレンタルはもう始まっていると思います。
続々と公開される韓国映画。もうすぐ大阪でも上映される「パイラン」「SSU(原題:BLUE)」はオススメです。お楽しみに!

この日は「風林高」の上映の後、「KT」が上映され、さらに「子猫をお願い」のチョンジェウン監督の学生時代の短編作「図形日記」「二人の夜」が上映され、その後に坂本順治監督とチョンジェウン監督の対談があったのですが、諸般の都合で「風林高」の上映終了後に失礼してしまいました。
日本写真映像専門学校ならびにスタッフ関係者のみなさんありがとうございました、そしておつかれさまでした。来年も引き続き「第三回」を開催してくださいますよう期待しております!

次回は、間もなくリバイバル公開される「ローマの休日」をご紹介します。

おしまい。