「ホテル・ハイビスカス」

恵美子の笑顔に逢いに


  

気を取り直して、十三から阪急に乗り三宮へ。
三宮アサヒシネマへ来るのは、ほんとに久しぶり。振り返ってみると2000年に「フォーエバー・フィーバー」を観て以来か...。そんなに来てなかったかなぁ。
驚いたのがシートが新しくなっていること。座席のレイアウトも若干変わっている。今まで、三宮地区でミニシアター系の上映は独占していたけど、シネ・リーブル神戸(3スクリーン)が新しくできて状勢が変わったし、国際会館も再出発したしね。お互いに競い合ってどんどんいいサービスを提供していただきたいですね。

まず、観たのは「ホテル・ハイビスカス」。「ナビィの恋」の中江裕司監督の新作。タイトルからも想像出来るように今回も沖縄が舞台のお話し。
「ナビィの恋」はとても面白く、良く出来た映画だった。今回も期待は高まる。

沖縄が持つ独特の開放感が一杯。
いつも不思議に思うには、沖縄がこんなに開放感があり、のんびりとしたムードが漂うのに、沖縄のさらに南にある台湾や香港がどうして全く違う雰囲気を持っているのかということだ。いつもセコセコしていて、イライラしている(決して嫌いではないんだけど)。当然だけど、全く違う文化であり、空気が流れている。太陽まで違う色に見えるから不思議だ。

この「ホテル・ハイビスカス」は、夢を見させてくれる映画だ。
誰しも、この映画を観ながら「恵美子のように、天真爛漫に生きられたら、どんなにいいことか」と思ってしまうだろう。恵美子もイイ。そして、彼女を取り巻く家族や友達(子分?)がもっとイイ。

幾つかの小さなエピソードをつなぎ合わせたストーリーになっている。ボクはこれがちょっと気に食わなかった。もう少し脚本を練り、一つのお話しにして欲しかったな。
このお話しで、もったいない使われ方をしているのが二人。まず、どこからか流れてきてホテル・ハイビスカスに逗留することになった能登島。もう一人はご存知「おばぁ」こと平良とみ。贅沢と言えば贅沢だけど、もったいないと言えばもったいなさすぎる!
まぁ、そんなことは細かいことで、恵美子の日々の暮らしと恵美子の家族の日常が、優しい視線で丁寧に描かれている。特に何もかも達観したような「父ちゃん」は凄いね。
パイナップル畑に出掛けて行って、その途中で出会う「きじむな」。父ちゃんに叱られて家を飛び出して薄暗いブランコで出会った謎の少女。どのエピソードも胸がキュンとなってしまいます。

ただ、エピソードを広げすぎて収拾がつかなくなっているような気もする。でも、今思い返してみると、それこそ監督の狙いだったのかもしれない。
美恵子がいなくなったトカゲの「きじむな」を探しているときに頭上からつんざくように響く爆音。その音は美恵子の耳には入っていないかのよう。海岸に突然張り巡らされている鉄条網。でも美恵子にはそれはあってないようなものだ。美恵子の兄と姉はそれぞれ黒人と白人のハーフだけど、そんなことは全く関係ない。
それらは特に意識されることではないのだ。沖縄にとっては。
そんなことをふと、考えてしまった。それが監督の思いだったとしたら「凄いな」。

このお盆、埃をかぶっていた「ネーネーズ」のCDを引っぱり出して聴いてしまいました。
もう、10年以上行っていない沖縄に行ってみたくなりました。

梅田ではテアトル梅田で上映中です。お時間が許せば、恵美子の笑顔を見に行ってあげて下さい。
次回は同じく三宮アサヒシネマで拝見した「人生は、時々晴れ」を紹介しましょう。

おしまい。