「夢精期」

思わず、ニヤニヤ思い出す


  

このシネマコリア2003の会場は愛知芸術文化センター。もちろん初めて。栄えに来るのも初めて(だったと思う)。
愛知県というか中京文化圏の底力を改めて見せつけられたような気がする。想像を遙かに超える立派な施設。こりゃホテル並だ。吹き抜けを通り抜けるエスカレーター、会場の12階には空中庭園もある。ここだけで一体幾つの文化施設があるんだ? ただただ驚く。このセンターに続く地下街(?)オアシス21という商業施設も凄い! 名古屋恐るべし!

「太陽はない」の時はほぼ満席だったけど、「夢精期」ではだいぶお客さんが減ってしまった。著名な俳優さんも出てないから仕方ないかな。資料によると韓国では2002年に公開されたそうです。

これが全く何の予習もしていなかったけど、面白かった。こんなちょっと下品(?)なネタの処理が上手いなぁ。いっこも陰気にならず、カラッとした仕上げがイイ。
中学生の悪ガキ四人組が主人公。もちろん勉強はそっちのけ。彼らの興味はズバリ男女の仲。時代背景は1988年、ソウルでオリンピックが開かれたころ。ちょこっと懐かしいホドリくんも出て来ます。
四人組は特定の彼女がいるわけはなく、日々想像を逞しく膨らませている。そんな時に教室に現れたのが教育実習にやって来た教生のユリ先生(キムソナ)。もちろん女性。教室の視線は彼女に釘付け。
実はユリ先生、四人組の現担任で、かつて自分の担任の先生だったピョンチョル先生(イボムス)に思いを寄せていた。
四人組の青春とユリ先生の憧れ。この二つを巧みに織り交ぜて物語りは進んでいく。この見せ方は上手いよ。

中学生だって、ある意味では充分大人だ。いっちょまえの考えも出来るし、即物的ではなく、純粋な恋愛に対する憧れも持っている。そうそう、純粋なんだ。ユリ先生から見ればまだまだ子供だけど、気分はオ・ト・コ。
一方、ピョンチョル先生から見れば、いくら成長したとは言え、かつての教え子ユリはいつまでも子供に過ぎない。
そんなちぐはぐな思いが交差しながら、とうとう教育実習の最後の日に行われる体育大会の日がやって来た...。

四人組の中でもリーダー格の男の子がちょっと大人びていてかっこいいのに対して、イボムスが冴えないおっさん手前の独身先生を上手く演じている(このイボムスってどんな芝居もこなすなぁ)。そんなピョンチョル先生にどうしてユリが憧れるのか、最初は良く理解出来ない。でも次第に生真面目で純なピョンチョル先生の持ち味が明らかになって来て、いつの間にかボクたちはユリを応援してしまうんだなぁ。

四人組の男の子はどの子もイイ。あまりにもキムソナがかわいいので、彼女の恋の行方にばかり目が行ってしまうが、彼らの存在ナシにこの作品は有り得ない。女性の方にとっては「アホちゃうか、猿みたい」と思われるでしょうが、男性にとっては誰もがニヤッとしてしまうエピソードばかり。
スケート場と言うとボクなんかは反射的にアイススケートを連想するんだけど、ここではローラースケート(確か「チング」でもそうでした)。ここで、年上の女の子グループをナンパして、逆に身ぐるみ剥がされるのは傑作でした。

決して「名作」ではないけれど、いつまでも記憶に残る楽しい作品です。チャンスがあれば是非。
でも、今後一般公開されたり、ビデオ化される可能性は...、かなり低そうです(キムソナが大ブレイクすれば別だけど)。
シネマコリア2003は、この後8/30・31の両日、東京に会場を移して行われますので、そちらの方面でお時間がある方はどうぞ。詳しくはこちら

次回は同じくシネマコリア2003で拝見した「ムッチマ・ファミリー」を紹介します。

おしまい。