「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」

ギリシャ系の人たちって


  

梅田ピカデリーも久し振り。なんだか考えてみたら梅田の映画館の勢力図はどんどん変わっている。ブルク7が出来たし、ナビオも改装されたしね。泉の広場上ルのピカデリーも松竹の旗艦劇場とは言え、梅田では場末の雰囲気が漂って来たような...。

シートが美しく改装されているこのピカデリーで観たのがアメリカの映画「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」。ついさっき観た「エデンより彼方へ」とはあらゆる意味で対象的なストーリー。
アメリカにはほんとに多様多種の人々が混じり合って暮らしていて、時には摩擦を起こしながら、時には融合して生きているんだなぁ、そんなことを実感させられる。お国は違うけど「モンスーン・ウェディング」や「ベッカムに恋して」「ボクの国、パパの国」なんかと同じ範疇に入るストーリー。これらの作品のギリシャ版ですね。
もちろん、ギリシャ人やギリシャ系米国人には会ったこともないから「こんな人たち」なんて知らないんだけれど、ギリシャの人々がどんな人たちなのかはこの映画を観ればたちどころにわかります(きっと、だいぶデフォルメされているんでしょうけどね)。

アメリカに住むギリシャ系の三十路を過ぎた未婚女性トゥーラが主人公。父親はギリシャから裸一貫で米国に渡ってきた移民。今では郊外に家を構え、街中でギリシャ料理を出すレストランを経営している。母親ももちろんギリシャ人。だからトゥーラはアメリカに居ながらギリシャ系社会の中にとっぷり漬かって今日まで生きてきたのだ。容姿は人並み以下、ちょっと太っているし、化粧もしなければ身だしなみにも気を使わない。今では父親のレストランで注文を取るのに忙しい。
父親の唯一の悩みは、いつまでたってもこの娘が結婚しないこと。

それがある日、トゥーラが恋に落ちる。まさしく「Fall in Love」やね。
相手の大学の教授(講師?)もすぐに彼女になびいてしまうといころは腑に落ちないけど、このお話しの主題は二人の恋の行方ではないので、その点はご愛嬌、目をつむりましょう。
この恋ばかりが原因ではないけれど、彼女がどんどん綺麗になっていく様子は凄い(恐ろしい?!)。オンナはこんな生き物なんや。

びっくりしたのは父親。娘はギリシャ人と結婚すると信じて疑っていなかったのに、こともあろうに娘が連れてきたのは非ギリシャ系の男(この人、何系なのかな?)。
あの手、この手でこの恋を思い止まらせようとする父親だが...。

アメリカにあるギリシャ系コミュニティに属し、その中だけで暮らしてきた一家が異文化を持つ婿を受け入れるまでの珍騒動を湿っぽくならず明るく描いたのがこの作品。
お婿さんの方が何かとすぐ折れてしまうなど「あれ」って思わないことも無いけど「まぁまぁ、それは置いといて」って気になるほどの迫力でギリシャ式が進行していくのは、まさしく「凄まじい」の一言。

この映画を観ていると「アメリカという国は、何なのか」と考えてしまう。大多数を占めるのはもともとイギリスから渡ってきたアングロサクソンなんでしょうけど、多くの人種がそれぞれの属するコミュニティを作り、時に混じり、時に排他的に生活している。そこに差別があるのかないのか知らないけれど、ある意味アンタッチャブルであれいながら共存していることは凄いことです。これで皮膚の色から来る差別が無くなれば言うこと無しなんだけどね。
でも、こんな雑多な人種の集合体であるアメリカが主体的な意志を持てるのかどうかは、ちょっと疑問だな。まぁ、そんな話しは置いといて...。

観ていて単純に、安心して楽しめる、そんな仕上がりになっています。
特にトゥーラを演じる主演の女優さん(ニア・ヴァルダロス)。なかなかいい味出しています。この人の魅力に負うところが大きいですね、この映画は。
もうしばらくは梅田ピカデリーで上映しているはずです。お盆休みの間にかがですか? 
上映時間が1時間36分。最近やたらと長尺の作品が多い中で、この上映時間は「偉い!」。

おしまい。